vol.232【増田紀彦の視点・第136回 小さな会社の資金調達(2)「少人数私募債」】

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Vol.232 2025.5.21
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【1】「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、
増田代表が送る、視点・分析・メッセージ
第136回 小さな会社の資金調達(2)「少人数私募債」
【2】 NICeニュース
9月23日(火・祝)ファイナルステージ開催
防災備蓄収納自慢 BJ-1グランプリ2025(NICe後援)
ほか10本
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「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
第136回
小さな会社の資金調達(2)「少人数私募債」
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前号に続き今回も小規模企業の資金調達法について解説したい。
いつの時代も資金繰りは小規模企業の悩みのタネだが、
とりわけ、トランプ政権によってもたらされた世界経済の不安定化は、
日本企業にも看過できない影響を及ぼし始めている。
そのため小規模企業が今後、事業を維持・発展させるうえでは、
従来の資金調達法だけに頼らず、多彩な手法を一刻も早く理解し、
それらを積極的に活用すべきと考える。
【高関税だけではないアメリカの「一線を越えた」政策】
本論(小さな会社の資金調達法)に入る前に、多少ボリュームを取って、
トランプ政権の政策に表れたアメリカの現状に言及したい。
各国に対する関税引き上げ措置だけでも大事(おおごと)だが、
トランプ政権の「一線を越えた」動きはそれだけにとどまらない。
デンマークに対するグリーンランドの取得要求や、
パナマに対するパナマ運河の返還要求、
ウクライナの鉱物資源の共同開発締結など、
領土の拡大や他国の資源の入手に関する野望を隠そうとしていない。
一方、アメリカ国内にとどまる外国人への迫害や差別、
イスラエルのガザ攻撃に反対の声を上げた学生たちへの弾圧、
その学生を処分しない大学への補助金凍結措置、
さらに公務員の馘首、地球温暖化対策の無視、多様性の否定と、
およそ「民主主義陣営の盟主」とは思えない動きの数々である。
【アメリカ経済は抜き差しならない状況。だが本当の問題は……】
これら一連の政策を重ねて考えると、
ひとえに「余裕のなさ」の表れだと思えてくる。
前述した判断や行動は、とかく、
トランプ氏個人の「気まぐれ」や「不勉強」のせいと思われがちだが、
実際は、もともとアメリカ合衆国そのものが、
言いたかったこと、やりたかったことの発露と考えるのか妥当だ。
と言うのも、アメリカの貿易赤字はすでに長期に及んでおり、
2024年には過去最大の1兆2117億ドルに達している。
さらに、アメリカの対外純資産(対外債権から対外債務を引いた額)は、
2024年第3四半期末時点で約マイナス23兆ドル。
円換算すれば実に3400兆円前後の債務超過である。
他方、日本はアメリカと反対で、約471兆円の資産超過。
中国も約44兆円、EUも約19兆円の資産超過であり、
言ってみれば、各国がアメリカに資金を貸し続けている図式である。
そのため、アメリカは対外資産から受け取る利息や配当より、
対外債務に支払う利息や配当のほうが徐々に大きくなり始め、
ついに2024年通期で、約14億ドルの一次所得赤字に陥ってしまった。
アメリカ経済の低迷を表す指標は、挙げればまだいくらでもある。
しかし、私たちが真に問題にすべきは、我が国の通商と産業が、
「衰退を隠せないアメリカあってのもの」ということだ。
関税交渉でトランプ政権の言い分を丸飲みするなどできない相談だが、
かと言って、アメリカを今以上に追い詰めれば、
結局、日本経済の不利益につながるというジレンマが存在している。
【造船分野での協力は交渉の有効カード】
繰り返しになるが、相手は本気も本気。
与野党問わず、いや、政治家任せにせず、
産官学の総力でこの難局を突破する必要がある。
そのための助けになりそうな切り口を一つ記しておく。
アメリカは航空・宇宙産業の優位とは裏腹に造船業の凋落が著しく、
中国を念頭に置いた制海権に対する危機意識は相当に高い。
実際、艦船数でも昨年末の時点で、
アメリカ290隻vs中国500隻という戦力差である。
さらに中国は毎年10隻前後の軍艦を造船しているが、
アメリカは駆逐艦1~2隻を造るのが精一杯。
対して日本の年間造船数は中国、韓国に続く世界第3位。
この能力の提供は対米交渉上の強力な切り札になると考えられる。
アメリカの軍備増強に手を貸すことには抵抗があるが、
「ディール」において、このカードを使わない手はないだろう。
【根本的にはアメリカ依存からの脱却が不可避】
とはいえ、造船カードで交渉に光明が見出せたところで、
それがアメリカ経済の回復に貢献するわけもなく、
やはり「アメリカ頼み経済」を根本的に変革する方向性が日本には必要だ。
その手立ての一環として、「灯台もと暗し」の教えに従い、
私たち小規模企業は内需に目を向けたい。
確かに物価高の影響で国内消費は落ち込み始めているが、
それでも売れるものは売れている。バンバン売れている。
局面としては節約志向が高まっているものの、
日本国内には、まだまだ動いていないお金がごっそりある。
それを動かすような商品やサービスを生み出すために、知恵を振り絞る時だ。
「こんな価値を提供するから、そのための資金が必要」。
この姿勢が、どのような方法で資金を調達するにせよ、前提になる。
【どんなに小さな会社でも発行可能な少人数私募債】
前置きが長くなったが、ここから、
小規模企業にもってこいの資金調達法=少人数私募債について説明する。
少人数私募債は「しょうにんずうしぼさい」と読み、
中小企業が金融機関を通さずに資金を調達する代表的な方法である。
『少人数』とは、募集に応じて投資できる人数が、
50人未満に制限されていることを示している。
『私募』とは、不特定の相手ではなく知人や関係者だけが対象という意味。
従ってネットなどを使った募集はできず、対象者には直接勧誘する。
『債』は、会社が発行する資金借入のための債券のこと。
少人数私募債は金商法に定められた届出が不要なので、
小さな会社でも迅速かつ手軽に募集をかけることができる。
「社債を発行する」と聞くと、大企業の取り組みのように思えるが、
取締役会を設置している株式会社は取締役会の決議で、
取締役会を設置していない株式会社なら代表取締役の決定で発行でき、
いずれも株主総会の決議は必要ない。
また、合同会社も社員(出資者)の決定で発行が可能である。
【返済義務はあるものの、出資依頼よりはハードルが下がる】
少人数私募債の償還期限は設備資金で3~5年、運転資金で2~3年が一般的で、
社債購入者に毎年利子を払い、償還期限に元金を全額返済するのが基本。
金利は自由に決めることができるが、年1.5~5.0%程度が標準だ。
少なくとも円建て定期預金の金利より高くなければ、
社債購入者にとっての魅力は薄れてしまう。
なお、前回のコラムで「第三者割当増資」について説明したが、
資金が返還されない出資に二の足を踏む人でも、
元金に加えてそれなりに高い利子が付いて戻ってくる少人数私募債なら、
募集に応じてくれる可能性は高まると考えられる。
【当たり前だが、50人未満とは49人以下という意味】
発行金額は1億円未満で自由に設定できる。
ただし、社債一口の金額は発行総額の50分の1以上であること。
このルールは簡単に思えるが、中には思い違いをする人がいる。
たとえば一口100万円の社債を発行した場合、
調達できる最大金額は4900万円になる。
50人未満の最大人数は49人だからだ。
なので、仮に5000万円を調達したければ、
最低でも一口当たりの金額を103万円程度に設定する必要がある。
なお、社債購入者の中に金融機関を含むことはできない。
発行手続きはさほど難しくないが、
ミスなく進めたいなら、司法書士などに代行してもらってもいい。
【必要なのは信用、人脈、情熱、計画、そして魅力ある年利】
小規模企業の中には、金融機関からの融資残高がそれなりにあり、
追加融資を受けにくい会社も少なくないはず。
そういう時にこの調達法が力を発揮する。
自社で発行する債券だから、当然、金融機関の審査もいらないし、
担保を設定する必要もない。
信用と人脈と情熱。精緻な事業計画と収支計画。そして魅力的な年利。
これだけあれば、大丈夫。
言うまでもなく、「これだけ」の中身を充実させるのが経営者の仕事だ。
また、発行する社債に金融機関の保証を付けることもできる。
そうすることで、社債購入者に対する信用補完が図れるため、
一般的な金利より低いレートを設定することも可能になる。
ただし、そのためには金融機関の保証料が発生するし、
それ以前に金融機関による審査をパスする必要がある。
【少人数私募債は決して縁遠くない。まずは事例研究に取り組もう】
少人数私募債を初めて知った人や、名前しか聞いたことがない人にとっては、
きっと、まだまだ縁遠い資金調達法だと感じているかもしれない。
しかし、私が知る限りでも、
マッサージ業、部品製造業、リサイクル業などの小規模企業が、
少人数私募債を発行し、現実に事業を伸ばしている。
また、数々の企業の少人数私募債発行実例をリポートした資料が、
以下で閲覧・ダウンロードできるので、こちらにも目を通してほしい。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/download/machi03_zirei.pdf
小規模企業にとって、本当に舵取りが難しい時代が訪れている。
一つでも二つでも資金調達の手立てを増やしておくことは、
経営者や起業家にとって不可欠な任務と心得よう!
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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NICe NEWS
Web更新、勉強会、お知らせ
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《Event》
9月23日(火・祝)ファイナルステージ開催
防災備蓄収納自慢
BJ-1グランプリ2025(NICe後援)
/archives/54590
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《Mr.NICe》 5月14日更新
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」313号
<最近の比較> 高い高い高~い
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《NEWS》 5月8日更新
NICe日記大賞2025 発表!
3月分の大賞日記
「6文字の挑戦」
/archives/47672
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《Mr.NICe》 5月7日更新
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」312号++
<最近の質問> あなたの才能は、才能を見出す才能と出合っている?
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《Report》 4月22日更新
開催速報:ありがとう! 箕と環&なみへい NICe交流会
/archives/54525
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《Trial Lesson》
一般社団法人 変形性股関節症と正しく向き合う会
個別相談付きメディカル・アロマケア(=股関節ケア)個別体験会
5月24日、6月14日、28日
https://henkeisei-kokansetsu.com/lp-medical-aroma-massage
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「防災備蓄収納2級プランナー講座」
5月26日・29日、6月5日、18日、24日、30日、
7月3日、17日、18日、8月5日、20日、24日、ほか
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-2kyuu/schedule/
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「防災備蓄収納1級プランナー講座」
大阪会場 6月2日・3日
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-1kyuu/
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「防災備蓄収納2級プランナー認定講師 資格講座 WEB版」
6月16日・7月14日、10月19日・11月16日、10月20日・11月17日
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-2koushi/
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「職場備蓄管理者 資格講座 WEB版」
7月29日、9月18日、ほか
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-manager/
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┃ ┃ ┃ ┃ ┃編┃集┃後┃記┃ ┃
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上記のお知らせトップに掲載した、
防災備蓄収納自慢 BJ-1グランプリ2025(NICe後援)。
昨年、初回開催で好評を博し、
読売新聞東京本社『防災ニッポン』に取材記事が掲載のほか、
日本テレビ「ZIP!」でもファイナリストたちが紹介されました。
今年も、誰でもエントリー&応援参加ができるオープン形式で、
ファナルステージはZOOMでの開催、
NICe代表理事の増田紀彦も出演予定です。
詳細および参加方法はこちら(無料)
エントリー締め切りは2025年7月10日です。
https://bichiku-shunou.or.jp/bj1-2025/entry/
次号の「つながり力で起業・新規事業!」NICeメルマガは、
6月11日に配信予定です。
(NICe広報・岡部)
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