vol.234【増田紀彦の視点・第137回 農協は本当に解体すべきなのか?】

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Vol.234 2025.6.23
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【1】「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、
増田代表が送る、視点・分析・メッセージ
第137回 農協は本当に解体すべきなのか?
【2】 NICeニュース
6月28日(土)NICe主催@名古屋
「NICe東海 実践的経営セミナー 2025」
利益拡大に直結! 小さなビジネスのための『プラスワン』大作戦
ほか11本
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「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
第137回 農協は本当に解体すべきなのか?
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早いもので、このコラムを毎月配信するようになって12年が経った。
その間、何年かに一度、突如として巻き起こる農協批判に対し、
「政治家やマスコミの言い分を、そのまま信じてはいけない」と伝えてきた。
確かに農協が批判を受けるのは、もっともな面もある。
ただし、批判が暴走し、過激化し、農協の解体へと向かった場合、
それで誰が得をするのだろうか?
最近の米価問題をきっかけに、再び三度、農協批判が高まっているが、
あらためて農協の何が批判の対象になっているのかを整理しつつ、
農協から利権を奪おうと虎視眈々の「勢力」について言及し、
日本経済と日本の農産物市場の今後を考える一助としたい。
【問題にされているのは、農協の上部団体】
地方に暮らす人々にとって、農協といえば、
1階にJAバンクのATMが設けられた3~5階建ての本棟に、
倉庫や作業所、直売所などがセットされた場所というイメージだろう。
しかし、それら一つ一つの農協を束ねる都道府県連合会になれば、
県庁所在地などに高層ビルを構える大企業さながらの印象に変わる。
さらに、全農や全中、全厚連などの上部団体ともなれば、
東京の大手町に建てた37階建ての自社ビルにオフィスを有しているし、
国内最大規模のヘッジファンドである農林中金や、
農協系の共済(保険)を扱う全共連も都心の一等地に大型ビルを構えている。
作業着を着て農家や農地を訪ねて回るのも農協職員だが、
スーツを着て貿易や金融のために世界を飛び回るのも農協職員だ。
昨今、何かと槍玉に挙げられる「農協」とは、主に後者のことである。
【農協の販売手数料は、職員人件費の原資と言うが……】
農協に対する批判は、立場によって変わる。
一番の当事者である農家(農協組合員)にとっては、
農協に納める農産物の価格決定に口を出せないことが、不満のタネだ。
もちろん、小規模農家や兼業農家は、
営業活動や価格交渉などの手間を掛けず、
一定の金額で農産物を引き取ってもらえるので助かる面もある。
が、やはり、農協は手数料を取り過ぎている。
言い換えれば、農協は儲けを農家に十分還元していないとも言える。
その指摘に対して農協は、
「職員の人件費を賄うための必要な収入だ」と反論する。
【相次ぐ職員退職。おかげでヤル気のない職員も安泰?】
しかし、私の見てきた限りだが、農協には、
労働意欲が高いとは、とうてい思えない職員も一定数在籍している。
そもそも、農協に入りたくて入った職員がどれだけいるだろう?
就職先が限られた地方で仕事を得ようと思えば、
農協への就職は、否が応でも有力な選択肢になる。
ところが入ってみると、昨今の業績低迷の影響もあり、
何かとノルマを課せられるキツい職場であることを痛感する。
新聞や雑誌の部数拡大、中元や歳暮の品の注文獲得、共済の勧誘……。
それらを重荷に感じる若手職員の退職は増える一方だ。
そうなると今度は、「辞められるのも困る」と、
職員の稼働や成長を厳しく求めない空気が広がり、
かくして、業績と見合わない人件費が膨張することになる。
農協は、農産物販売で得た利ざやを農家に還元する代わりに、
そうした無駄な人件費の穴埋めに使っているようなものだ。
【農協と子会社間で受発注を繰り返す内向きモデル】
多いのは、職員だけではない。
農協は全国に130社ほどの子会社を所有している。
農協の部署によっては一つの商品や案件を、
これらの関連会社を噛ませながらグルグル回し、
その都度、マージンを乗せて、最終的には相場よりも高い価格を、
消費者や取引先に提示・請求するケースも少なくない。
もっとも昨今は、ネットを通じて価格の比較がしやすくなったため、
農協の「高額商品・高額サービス」は敬遠される傾向も出てきた。
それでも農協自体や子会社の業績を落とすことができないため、
「グルグル回し」を続け、なおさら不振を窮める悪循環に陥っている。
【農協事業の幅広さは、民間では真似できないレベル】
農協の子会社が多いのは、取り組む事業分野が広範囲に渡るためだ。
農協は農産物の集荷・販売事業や農業用品の共同購入事業のほか、
銀行同様の金融サービスを行う信用事業(JAバンク)や、
生損保などを扱う共済事業(JA共催)を手がけている。
さらには全国に107の病院を有する医療事業、
グループホームなどを運営する高齢者福祉事業、
出版事業、IT事業、宅配事業、観光事業、葬祭事業、清掃事業、
建設事業、不動産事業、石油・ガス販売事業、ガソリンスタンド運営など、
なみの企業では追い付けないほどの多角化を遂げている。
もっとも民間企業が事業所を置かない山間地や過疎地では、
これら農協の事業が地域住民の生活を支えているのも事実である。
ただし、前述のように、仲間内で受発注を繰り返して、
マージンを稼ぐような商売は、今後ますます通用しなくなるはずだ。
【農協の金融事業に対する優遇廃止を訴えるアメリカ】
ここまでの「農協批判」は、いくつかある指摘の一部であり、
最も強い批判を受けているのが、
金融事業(JAバンク)や共済事業(JA共済)のあり方である。
その批判を誰よりも強硬に主張するのがアメリカだ。
2014年5月、アメリカは在日米国商工会議所の名前で、
『JAグループは組織改革を行うべき』と題した意見書を公表し、
日本政府に農協金融事業への規制強化を要求した。
要するに、日本の金融・保険市場に参入したいアメリカ企業にとって、
農協金融への優遇措置が障壁になっている、というクレームである。
このアメリカの要求を受けて、当時、
農家以外の人も農協構成員になれる準組合員制度の廃止に挑んだのが、
現在の農林水産大臣である小泉進次郎氏だった。
しかし、進次郎氏は目的を遂げられず、一敗地にまみれた。
私自身は、準組合員制度を維持すべきだと思う。
前述のように、地方の中には、
農協の様々な事業なくして、生活が成り立たない地域もあり、
農家以外の人も、それらのサービスを受けられる状態が不可欠だからだ。
【郵政民営化に続く二匹目のドジョウ】
日本の金融市場を開放せよというアメリカの要求は、
農協攻撃以前から始まっていて、過去に一定の成功を収めている。
それが2007年の郵政民営化である。
その数年前からアメリカは、郵便貯金と簡易保険を国営から外せと強く要求し、
当時の首相・小泉純一郎氏がそれを丸飲みした。
それに勢いづいたアメリカが、次に狙いを付けたのが農協マネーだ。
しかし前述のように、こちらは一度頓挫している。
もっとも当時の「農協改革」リーダーだった進次郎氏は、
いまだ、その思いを諦めてはいない様子だ。
10年前、農協&農水族議員に敗北した悔しさもあるだろう。
実父が実現した郵政民営化に肩を並べたいという夢もあるだろう。
加えて、アメリカとの関税交渉を巡る武器にしたい思いもあるだろう。
【アメリカは農産物市場の奪取も狙っている】
もっとも「偉大なるアメリカ」の再興に必死なトランプ政権は、
農協マネーの開放だけで満足しないと私は推測する。
農産物・畜産物流通を一手に担う全農(全国農業協同組合連合会)も、
農協から切り離し、民間企業にせよと要求してくるのは確実だ。
全農が株式会社化した場合、当初は株式に譲渡制限が付されるだろうが、
一定期間後、NTTやJR、日本郵政がそうだったように、
譲渡制限は解除され、誰でも全農の株式を取得できるようになるはず。
その日を待ち構えているのが、
世界の農産物流通を牛耳るアメリカの穀物メジャーだ。
【日本の手で農協改革を実現し、アメリカの野望を阻止しよう】
アメリカとの真っ向勝負が容易でないことはわかる。
が、一度、小さな穴を開けてしまえば、
そこから一気にアメリカ資本が日本の金融市場や農産物市場に攻め込んでくる。
日本の農産物や金融が生み出す成果がアメリカのものになれば、
巡りめぐって、あらゆる業種の日本企業に悪影響が及ぶのは必至だ。
そんな展開を唯々諾々と受け入れるわけにはいかない。
だからこそ、農協は時代に則した組織に生まれ変わってほしい。
そのために手伝えることがあるなら、何でもしたい。
日本の努力による農政改革・農協改革こそが、
日本経済と私たちの暮らしを外圧から守る砦だ。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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NICe NEWS
Web更新、勉強会、お知らせ
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《Event》
6月28日(土)14時スタート 増田紀彦&小林京子登壇
「NICe東海 実践的経営セミナー 2025」(NICe主催)
利益拡大に直結! 小さなビジネスのための『プラスワン』大作戦
/archives/54617
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《Event》
今年もやります!今年はDIYもOK!
わが家の防災備蓄収納自慢 BJ-1グランプリ2025(NICe後援)
エントリー締め切りは7月8日(火)
ファイナルステージは9月23日(火・祝)
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8月2日(土)増田紀彦&小林京子登壇
新宮CoCoスクエア1周年イベント
夏休みスペシャル 親子頭脳交換会(NICe協力)
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増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」315号
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5月分の大賞日記
「米不足の今こそ、5分づき米のすすめ!」
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《Mr.NICe》 6月7日更新
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」314号
<最近の責務> 百人百色 ~例えば、女性歌手の歌声~
/archives/54662
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《NEWS》
「デザインのひきだし55」(6月号)に
太美工芸株式会社が掲載!
特殊印刷による両面ステッカー付録付き
https://taibi.nagoya/archives/5089
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《Trial Lesson》
一般社団法人 変形性股関節症と正しく向き合う会
個別相談付きメディカル・アロマケア(=股関節ケア)個別体験会
6月28日、7月12日、26日
https://henkeisei-kokansetsu.com/lp-medical-aroma-massage
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「防災備蓄収納2級プランナー講座」
6月24日、29日、30日、
7月3日、17日、18日、27日、8月5日、20日、24日、31日、ほか
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-2kyuu/schedule/
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「防災備蓄収納2級プランナー認定講師 資格講座 WEB版」
10月19日・11月16日、10月20日・11月17日
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-2koushi/
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「職場備蓄管理者 資格講座 WEB版」
7月29日、9月18日、ほか
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-manager/
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┃ ┃ ┃ ┃ ┃編┃集┃後┃記┃ ┃
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シリーズコラム「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
バックナンバーはこちら
https://x.gd/QF3ru
2015年2月配信 メルマガVol.27から抜粋
【第24回「農協改革」は、誰のためのものか?】
/archives/28247
2017年3月配信 メルマガVol.52から抜粋
【第42回 小規模事業者に、構造改革の恩恵はない】
/archives/38719
さて、いよいよ今週末の開催となりました。
上記のお知らせトップに掲載しています、
6月28日(土)「NICe東海 実践的経営セミナー 2025」。
利益拡大に直結! 小さなビジネスのための『プラスワン』大作戦、と題し、
増田、小林、菅沼のNICe理事たちが、暑い名古屋をさらに熱くします。
参加お申し込みはまだ受付中です、どうぞご来場ください。
パソコン用参加申込みフォーム
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次号の「つながり力で起業・新規事業!」NICeメルマガは、
7月11日に配信予定です。
(NICe広報・岡部)
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