増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」325号 私の情報源

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<最近の機微> 私の情報源
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昔に比べてタクシーの利用頻度がめちゃくちゃ落ちている。
若い頃のように、都内のあちこちを大急ぎで訪ねることもないし、
終電過ぎまで仕事をしたり、飲んだりしていることもなくなった。
それよりも何よりも、タクシーに乗るのがつまらなくなった。
タクシー運転手との会話は、かつて私の重要情報源だった。
彼らは景気動向にすこぶる敏感だし、
様々な業種の客を乗せるから、なかなかの業界通・事情通でもある。
時には、ふいに飛び出した身の上話から思わぬ教訓を得ることもある。
だから私は彼らに積極的に話しかけてきた。
会話が弾むかどうかは、最初の声かけにかかっている。
私は運転手の氏名を「つかみ」にする。
「おっ、私の同級生と同姓同名だ」(もちろんウソ)。
「そのお名前は何と読むんですか? …… へー、珍しいですね」。
「佐藤さんは秋田県のご出身?」(訛りですでに見当が付いている)などなど。
ところが2、3年前からか、
運転手の氏名を表示したプレートがなくなってしまった。
聞けば、トラブルになった乗客がスマホでネームプレートを撮影し、
その画像をネットにあげて、運転手を晒者にする事態が頻発したそうだ。
運転手の安全が担保できないと考えたタクシー業界は、
プレートを外したり、隠したりするように措置した。
かくして、私の「つかみのネタ」は葬り去られてしまった。
世の中は変わる。一言で言えば、そういう話だ。
かと言って、ネットやAIを主たる情報源にする気はない。
それらは私にとって補助手段にすぎない。
私が欲しいのは、感情のこもった情報だ。
「何」ではなく、その「何」を人々がどう思っているか。それが知りたい。
人の心の機微をキャッチする感覚を磨くことこそ、
経営者の端くれたる者の務めと信じるからだ。
だから私はこれからも、
袖すり合っただけの人々との「やり取り」をしつこく追求したい。
さあ、タクシー運転手の「後継者」を一刻も早く探さねば。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第325号(2025/10.7発行)より一部抜粋して掲載しました。
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