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NICe創業・新規事業セミナー

第3回N-1グランプリ2012 レポート



2012年4月14日(土)、東海エリア(愛知・岐阜・三重)創業7年以内の中小企業ビジネスの祭典「第3回N-1グランプリ2012」が開催された。若い企業の出展と異業種交流を軸に、次代を担う企業を応援し、未来へとつなげる一大祭典だ。NICeを含む50以上の企業や団体が後援・協力・協賛した今回は、過去最多の145団体が出展。NICeメンバーのブースもあちこちに。ステージではトークライブや表彰式をはじめ、NICeの増田紀彦代表理事による特別講演も行われた。さらに、福島県と新潟県からNICeの仲間も参加し、ブースでそれぞれの産品を販売。また彼らを応援しようと、愛知県、滋賀県、大阪府からNICeの仲間が駆けつけた。


  
▲▼復興支援の一環として実行委員会が無償提供してくれた「福島県ブース」。そこには、「2.11NICe大宴会in福島」(レポートはこちら参照)にも出店した、(社)えがお福島金子幸江さん(福島県郡山市)、(有)鈴藤商店鈴木利通さん(副福島県伊達市)が出店。ふたりは自社の製品だけではなく、遠方のために来場できない県内の仲間から託された様々な産品も販売した

  

 

▼「福島県ブース」の隣は、後援団体ということでNICeのブースも用意してもらった。ここでは、新潟県十日町市の(有)白羽毛(しらはけ)ドリームファームの樋口利一さんと樋口徹さんに協力していただき、自慢の魚沼産コシヒカリ、豪雪を生かして糖度を増した雪下ニンジンとジュースを販売。炊きたてのお米の試食も行い、多くの来場者に喜ばれた。またNICeの仲間も各地から応援に駆けつけ、講演中の不在時には両ブースの売り子役を引き受けてくれた

 

  

 


▼会場内の各ブースは早朝からセッティングを行ない、開会9時のスタート前には準備万端に。来場者だけでなく、出展者もそれぞれのブースをまわり、応援し合う。そんな交流シーンが各所で見られた

  

  

   




■特別講演

「フルーツベンチャーに学ぶ
 “逆転の発想”の威力」


一般社団法人起業支援ネットワークNICe 増田紀彦代表理事


ベンチャー企業の“祭典”にふさわしく、元気良くステージに駆け上がった増田氏はさっそく講演をスタート。

「今日は福島県と新潟県からNICeの仲間も来ています。食べ物をつくってくださっている方々です。人間はものを食べて生きています。どんなに景気が悪かろうと、食べ物は絶対に存在し、流通します。しかし日本には多くの食品が世界から安く輸入されています。そんな厳しい競争下ですが、見事な取り組みで好成績を挙げている企業があります。二社の事例を紹介しますが、どちらも果物にかかわる企業です。そして、これらの会社は見事な“逆転の発想”で果物を生産、加工、販売しています。これらの発想は、業種に関係なく、小規模の企業のみなさんの役に立つ智恵のもとだと思います」




●“逆転の発想”の威力 事例1
北海道音更町:氷点下での南国フルーツ栽培


最初に紹介したのは、穀物や乳製品の産地で有名な北海道十勝地方に位置する音更町の事例。冬はマイナス20度になる酷寒の地で、なんと南国フルーツのマンゴーの栽培に成功し、間もなく量産体制に入るという。マンゴーといえば、国内では主に沖縄県と宮﨑県が産地。なぜ、そんな北の十勝でマンゴー栽培を始めたのか? そもそも、そんなことが可能なのか? そして一体、誰が思いついたのか?

発案したのは農家ではない、帯広の起業家たちだ。
「マンゴーがつくりたい、というスタートではなく、活用されていない資源を何かに生かせないか、という発想から始まった成功事例です」

活用されていない資源とは? 
北海道は数多くの温泉の源泉が点在するが、温泉施設をつくるとなれば費用もかかる。しかも冬場の利用客は見込めない。そのため放置されたままの源泉が各地にあるのだという。そして、冬はもちろん、大量の雪が降る。放置されたままの温泉の源泉と大量の雪。このあり余った自然エネルギーを有効活用して何かできないか、それがこの事業のスタートだ。

「北国で熱帯フルーツをつくったら面白いんじゃないか?」と、宮崎県へ研修に行った、帯広の起業家たちが思いつく。使用されていない源泉からパイプをビニールハウスへ引き、冬の室内を加温する。雪は土をかぶせて保管しておけば融けず、夏の冷媒として活用できる。こうして、通常は冬から栽培され夏に収穫されるマンゴーが、この十勝では、夏から育てはじめ、冬に収穫するという逆のサイクルで栽培されることになった。

「農業のことがわからないからこそ生まれた発想です。農家だったら逆に考えもしない発想です。今その場に当たり前のようにあって、使用されていない資源。それを活用して何かできないかという発想を、ぜひこの東海でも、都市部でも、意識してみてください」


●“逆転の発想”の威力 事例2
山口県周防大島町:ジャム店と伝統農業


次に紹介したのは、瀬戸内海で2番目に大きな島・周防大島で、手づくりジャム専門店「瀬戸内Jam’s Garden」を経営する松嶋匡史氏の“逆転の発想”。松嶋氏は、ここ名古屋の出身だ。新婚旅行で訪れたパリでジャム専門店に魅せられ、会社勤めから一転し、ジャム屋をやろうと決意する。そして、妻の故郷・周防大島で起業。

周防大島は、山口県産のみかんの8割を生産するみかんの名産地。「島の産業を使ってジャムを」と思っていた松嶋氏だが、ジャムの代表格であるマーマレードは、みかんではできないことがわかる。マーマレードは、原料であるオレンジの皮の苦みが特徴だが、みかんの皮は甘過ぎてマーマレードの味が出ないのだ。だが松嶋氏は執念で、緑色の時期にみかんを収穫する方法を思いつく。それなら皮の苦みもあり、また、収穫までの手間が減り安定収入が得られる農家も大喜び。また島のもうひとつの特産であるサツマイモも、どうにかジャム化しようとするが、焼いたパンに塗ろうとすると、ジャム特有の伸びが出ない。そこで思いついたのが“焼きジャム”という逆転の発想。先にパンに塗ってから焼くことで、美味しさが増した。さらに、世界一美味しいと言われながらも、あまりにも皮が固く、売れずに放置されていた果実・フェイジョアンも製品化に成功させ、今や店の人気商品になっている。



この島はかつて人口5万人だったが、内陸と結ぶ橋ができたことでストロー現象が起き、今や2万人弱に減少している。だが、100種類以上の商品が並ぶ素敵なサロン風のジャム店へ、わざわざジャムを買いにくる観光客は増え続けているという。

「みかんではできない、サツマイモでは無理、フェイジョアンも売れない。それらをすべて、この島の産物でジャムをつくりたいのだという執念と知恵で製品化させています。知恵でこのように資源を財産にできる、付加価値をつけることができる。ぜひ、資源をいかに活用するのかという視点で、みなさんもビジネスを意識していただきたいと思います」


●頑張る福島の生産者・起業家の応援をお願いします

「今日は東海エリア以外からもNICeの仲間が参加しています」と述べ、まず福島県の地図を映し出し、位置関係を説明。

 

「震災後の福島第一原発事故の影響で、福島県内の生産者や関係者は大変な苦労を強いられています。検査をクリアし、安全性が確認されているにもかかわらず、です。それでも一生懸命につくっている生産者さんがたくさんいます。今日は頑張っているそんなふたりをご紹介します」と、壇上に招いた。

▼そのひとり、伊達市から参加した鈴木利道さん。
「消費者のみなさんが、国の発表に対して疑いの目があるのはやむを得ないと思います。ですが、できる限り検査済みのものを認めていただけたら有り難いです。とはいえ、政府では隅々まで行き渡らないですし、不信感もぬぐえないでしょう。生産者さんも、『どうせつくっても買ってくれないだろう』とあきらめムードがあります。しかし、ちゃんと検査したものなら買っていただける、ということを自分たちで証明していきたいと思っています。そのためにも、自分たち民間できちんと検査し、流通させていくためのNPOを立ち上げて活動していきます。これから100年でも200年でもかけて、もう一度きれいな福島を取り戻していきたいと思っていますので、みなさん、応援よろしくお願いします」


▼郡山市から参加した金子幸江さんは、ブース提供への感謝を述べ、今回のイベントの印象から語った。「初めての名古屋は、活気があって楽しい街だなぁという印象です。今日は福島を知っていただけるきっかけを提供くださり、本当にありがとうございます。私たちは福島県の農産物を県外の方に広める活動をしています。福島県は全国で3番目の面積を持つ大きな県で、1日では回りきれないほど広いです。放射線量の影響がなくても、同じ福島県ということで風評被害を受けています。これまで福島県産の農産物は、首都圏の1/5の食料を担ってきました。しかし震災後、福島県産というだけで取り扱わないという店が多いのが現状です。どうぞ正しい情報で選んでいただければと思います。今日は、テレビでもおなじみの“DASH村”がある、浪江町の名物『なみえ焼そば』もブースで販売しています。伝統を残していこうと頑張っている街です。B級グルメでは微妙な4位に輝いています(笑)。必ず、もやしを入れてめしあがってください」


続いて、新潟県十日町市から参加した仲間があいさつした。
(有)白羽毛(しらはけ)ドリームファームの代表取締役の樋口利一さんは、魚沼産コシヒカリを生産している米作農家。「5年前に脱サラし、農業で食べていくと決心しました。一番の理由は、自分たちの土地、食を、自分たちで守りたいという想いでした。耕作放棄地を見るたびに、土地が荒れていくのが寂しくてしょうがない。田んぼか畑がわかならいようなところが増えていくのが、寂しい。ならば自分たちでと決心し、独立しました。今日は盛大な会にお招きいただき、ありがとうございます」


▼樋口徹さんも利一さんと一緒に独立した仲間だ。「十日町でも昨年3月12日に大きな地震があり、夏は水害、この冬は雪害でした。今なおうちのまわりには1.3mの雪が残っています。しかし、この雪があるおかげで、雪下ニンジンのように、大変美味しいものができるということも見つけることができました。また県外から多くの方がスキーに来てくださるおかげで、冬はスキー場での仕事もいただけています。この雪と仲良くやりながら農業をやっています。
私たちの十日町市白羽毛(しらはけ)は、旧魚沼郡でお米は魚沼産ですが、あえて白羽毛という名で売って、みなさんに知っていただこうと思っています。美味しいお米を食べていただきたいという気持ちを大切に、これからもつくっていきます。よろしくお願いします」


ふたりのあいさつの間、プロジェクターには田んぼで草むしりをする増田氏の姿も映し出されていた。これは、2010年度にNICeで開催した「NICe棚田クラブ」(活動レポートはこちら参照)のワンシーン。白羽毛(しらはけ)ドリームファームの田んぼ1枚をNICeで借り、米づくりをとおして体験学習活動をさせていただいたのだ。今年の秋にはまた、この“NICe棚田”での収穫イベントを計画している。

4人のあいさつを受けて増田氏は、講演のテーマと重ねてこのようにしめくくった。
「逆転の発想です。十日町は国の指定で特別豪雪地帯と呼ばれるほど、冬は積雪が3mにも及びます。冬は2階から出入りするため、夏に集落を見ると家屋が高く、どこか違う国の風景のように見えます。それほど大変な雪を、逆転の発想で生かし、糖度を増したニンジンをつくり、今日もブースで販売しています。日本中にはほかにも、いろんな自然の問題、事情、苦労をかかえている地域がたくさんあります。が、それをすべて、逆転の発想にしていくことができるのです。それこそが、日本の起業家の強さではないでしょうか。今日は、そのような逆転の発想で頑張っている実例と、実際に頑張っている方々に来ていただきました。ぜひ、ご来場のみなさんも、都市部に暮らしていますが、地方で頑張っている方からヒントを得ていただければと思います。もう一度、福島と新潟のみなさんに、拍手をお願いします」


▼主催した「第3回N-1グランプリ実行委員会」は約2年前から企画準備を始め、全員がボランティア。その人数は60名にも及ぶ。実行委員のスタッフのみなさんは前日からほぼ徹夜にも関わらず、当日はおせっかい戦隊ゴジュウレンジャー、チアガール、サポーターに扮し、広い場内を元気いっぱいに走り回り、ステージでのイベントや各ブースを盛り上げてくれた
  

  

   


取材・文、撮影/岡部 恵
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