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NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト いわき視察&ミーティング報告







2015年3月4日(水)、「NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト」のため、福島県いわき市を訪問した。このプロジェクトは、組織や担当地域枠の異なりを越えて、連携による新たな6次化商品開発を目指して2014年9月から始動(※参考 開催レポート下記)。
NICe増田紀彦代表理事が同年6月より、福島県農林水産部が実施する「福島県6次化事業体サポート事業」のコーディネーター職に就任し、また同部が実施する「福島県地域産業6次化イノベーター事業」のビジネスプランナーにも就任したことがスタートの契機となった。増田代表は、同県各地に配置されている支援員らとともに、生産者や食品メーカー、食品加工会社のもとへ頻繁に赴き、福島県の6次化事業発展と、県内の農林水産業復興に取り組んでいる。その取り組みを通じて出会った生産者・農作物・加工品・生産工程・知恵・技術と、これまでNICeの活動や交流を通じて育んできた資源を組み合わせ、つながり力の連携により新製品をつくり出そうという取り組みが、この「NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト」だ。

現在は、新製品の開発だけにとどまらず、情報交換、ノウハウや素材提供、知恵の共有などにより、枠や組織を超えた連携の輪がさらに広がっている。今回もその活動の一環として、経営者からの相談要請を受け、連携の可能性を探るべく、NICe増田紀彦代表理事、福島県中小企業団体中央会 6次化支援員のいわきエリア担当・荒川周介氏、そして震災後に幾度といわき市内に赴き支援活動を行った名古屋のNICe正会員・菅沼之雄氏も加わり、福島県いわき市の2組の経営者を訪問した。

最初に訪問したのは、いわき産の杉「磐城杉」の間伐材で高級割り箸を製造販売している株式会社 磐城高箸(いわきたかはし)。一行はその途中で、いわき市小名浜の水産加工業・有言会社丸由水産(まるよしすいさん)の番内寿江さん・政充さん親子と合流し、海岸線から7kmほど山間に位置する川部町へと向かった。



数羽の鴨が浮かぶ、のどかな四時川(しどきがわ)沿いに工房を構える磐城高箸。代表を務める高橋正行さんは、間引きされる間伐材に新たな価値を見出すことで、林業の復興に貢献したいと、2010年8月に創業した。だが翌年に震災。度重なる余震で製造機械も壊れ、一次は事業継続断念を考えたこともあったそうだが、苦難を乗り越え、こだわりの純いわき産高級割り箸を製造し続けている。現在では、全国の料亭や飲食店、企業や映画のノベルティ、土産もの、贈り物として広く愛用されているほか、地元産の杉だけでなく、被災3県の岩手県・宮城県・福島県の杉間伐材を使用した割り箸「三県復興 希望のかけ箸」製造も手がけている。これは平成23年度全国間伐・間伐材利用コンクールで間伐推進中央協議会長賞を受賞したほか、平成24年度の福島県新商品生産による新事業分野開拓者認定制度商品としても認定、平成25年度にはグッドデザイン賞も受賞した。

会合の冒頭、荒川氏より会の主旨説明がなされた。増田氏と荒川氏は、いわき産の「磐城杉」高級割り箸と、丸由水産のさんまとあじの「ささ干」、同じ“いわき産”の両者を組み合わせることで付加価値を付け、ギフト商品として展開できるのではと考え、連携の可能性を探りたく両者顔合わせの会を計画したという。
丸由水産の「ささ干」とは、「魚が嫌いな人にも美味しく食べてほしい」との想いから開発された逸品で、同社ロングセラー商品のひとつ。「ささ」とは酒のこと。小名浜港で水揚げされたさんまやあじを新鮮なうちに内臓を取り除き、一つひとつ丁寧に洗浄し、酒をベースにした独自の調味料に一昼夜漬け、冷風乾燥させてつくりあげている。余分な脂分が抜け、魚の臭みも抑え、小骨もやわらかくなりとても食べやすい。また乾燥させることでアルコール分は飛び、焼く時には煙が少ないというのも特徴だ。この「さんまのささ干」は、いわき市観光土産品奨励賞、福島県ブランド化特定産品選定賞、全国観光みやげ品審査会日本商工会議所会頭賞などを受賞している。現在は、市内の販売所や物産展、ネットでの販売もしているが、番内さん親子はこの人気商品をもっと広めたいと、パッケージの改善にも取り組んでいるところだという。
磐城高箸の高橋さんは、割り箸の焼き印や箸袋のデザインも合わせて個別の要望に応えられるとし、これまでに手がけた多種多様な割り箸を紹介。また、自社のデザイナーも会合に参加し連携していくことも可能だと述べた。そこで一行は、杉の丸太から割り箸へと一環生産している製造工程を見学させていただいたのち、専属デザイナーにも加わってもらい、割り箸の焼印から、箸袋、その台紙、ささ干のパッケージまで、トータルな連携へ向け話し合いを進めていくことになった。







▲▼東北で3社しかない割り箸製造会社の中の1社。工房脇の屋外で原木をカットし、ショートケーキ状に丸太割り。杉の香りに包まれた工房内で、ショートケーキ状から板状へ。乾燥させた後、板をさらに小板にし、割り箸の長さ24cmで切断。さらにその板をところてん方式で、割り箸よりも一回り大きい板にして研磨していく。細かな工程ごとに繰り返し選別され、最終的には何度も洗って使えるよう硬い高級割り箸が完成する



▲▼乾燥に使う薪ボイラー、もちろん燃料は作業過程で出る端材や使用済みの割り箸を使用、他の化石燃料は使わない。乾燥機はコンテナを再利用したオリジナル




▲▼断面に丸みのある九寸利休箸(24cm)、オーダーに合わせて慎重に焼き印を入れていく




○株式会社磐城高箸
〒979-0153 福島県いわき市川部町川原2番地
http://iwaki-takahashi.biz/index.html

○有限会社 丸由水産
福島県いわき市小名浜諏訪町11-11
http://www.maruyoshi.e-iwaki.jp/index.htm





次に一行は一気に北上し、途中でいわき市四倉町の農家・根本効さんと合流して、常磐高速道の四倉PA(よつくらパーキングエリア)へ向かった。根本さんは地元の名士で、2014年9月に岩手県大槌町で開催された「女性のための起業セミナー」の際、石巻市内の飲食店で偶然お目にかかったのをご縁に、その後、増田氏らと情報交換などを重ねている。その根本さんを介して紹介いただいたのが、根本さんと同地区の株式会社エイブルの代表 猪狩正さんだ。猪狩さんは常磐高速道の上り 四倉PAで、食堂「産直や よつくら亭」と売店などを運営している。海山の地の利を生かしたボリューム満点メニューや、パーキングエリアの食堂としてはきわめて珍しい“こあがり”(靴を脱いで上がる空間)を設けるなど、独自のサービスを提供し、知る人ぞ知る人気PAとなっている。現在、店舗営業は上り線のみで、下り線のPAでは週末のみ移動店舗での営業をしているが、近い将来、下りPAにも店舗も開く予定。3月1日には常磐自動車道が全線開通し、四倉PAの利用者も増加したとのこと。そこで、上下PAでの品揃えやサービス内容について相談を受け、増田氏と荒川氏が情報提供等でサポートしている。この日は、2代目である信長さんとも対面し、今後も継続的に情報共有していくことを確認し、視察&ミーティングを終了した。







○四倉パーキングエリア・上り
〒979-0225 福島県いわき市四倉町下柳生字宮下49-16
http://www.driveplaza.com/sapa/1400/1400161/1/
営業時間 7:00〜20:00(自動販売機は24時間)
大型:15/小型:16


※参考レポート
NICeプロデュース ふくしま“食”プロジェクト 第1回会議報告 http://www.nice.or.jp/archives/24457
マコモ田 視察報告 http://www.nice.or.jp/archives/26105
NICeつながり祭り2014 第2部 頭脳交換会 http://www.nice.or.jp/archives/26311
ABE農園の取り組み 情報共有ミーティング報告 http://www.nice.or.jp/archives/26915
会津地域視察&ミーティング報告 http://www.nice.or.jp/archives/27491


開催予定 2015年3月14日(土)【東北応援スペシャル】
食ビジネス 7組あらため14組連続プレゼン&みんなで大討論 NICe頭脳交換会 in 福島
詳細&参加申込みはこちら http://www.nice.or.jp/archives/26062


取材・文、撮影/岡部 恵

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