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どうする?日本経済

文字どおり「全国民、命懸け」の経済成長


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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

    第59回 
    文字どおり「全国民、命懸け」の経済成長
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【それでも「最悪】ではなかった台風21号禍】

台風21号の猛威には、正直、驚かされた。
他の災害の被災者の方々も含めて、ご苦労されている皆さんが、
一刻も早く、従来の暮らしと仕事を取り戻せるよう、願ってやまない。

一方で、誤解を恐れずに言えば、台風21号の災禍は、
最悪のシナリオと比較すると、「まだ軽かったほう」と言っていいと思う。

21号が大阪・神戸に上陸したのは、ご存じのとおり午後2時前後。
その日の大阪湾の満潮時は午後5時10分。
つまり、台風上陸があと3時間遅かったとしたら、
潮位は確実に数十cm程度上昇しており、
そうなれば高潮被害の大きさは、とんでもなく拡大していたはずだ。

また、21号の速度がもう少し遅く、大阪湾に留まっている時間が長かったら、
さらに大量の雨水が大阪・神戸を襲い、甚大な洪水を起こした可能性もある。


【高潮にも雨にも弱い、日本の三大都市】

あの台風禍のあと、マスコミはしきりに、
「この台風が東京に向かっていた場合」の被害の大きさを論じていた。
当然、あり得ることで、まさに身の毛もよだつ話である。

大阪、東京、加えて名古屋。
日本経済の牽引役であるこの三大都市は、北上する台風の直撃を受ける場所にある。
さらに共通する大きな問題がある。いずれも海抜が低いことだ。
これらの地域は、縄文前期の温暖期には海の底だった場所であり、
後に海面が後退し、そこに河川から運びこまれた土砂が堆積してできた、
いわゆる沖積平野である。したがって海抜が低いだけでなく、
湿地帯として形成された土壌のため、洪水に対しても脆弱な面がある。

要するに、三大都市は、海からの高潮や津波にも弱く、
空からの大雨にも弱い場所に広がっている。
加えて、これらの地域は、常に地震の脅威にさらされているエリアでもある。


【急速な近代化と高度成長のツケがまわってきた】

なぜ、かくも危険な場所に、我が国は都市を形成してしまったのか?
明治期、いわば「資本主義への最終参加者」として、
急速に工業化社会を形成しようとしたからである。

工業生産のためには大規模工場が建設できる平野が不可欠であり、
なおかつ効率的な交易のためには海の近くであることが条件だった。

さらに第二次世界対戦後の復興をかけて、我が国は加工貿易を国策とし、
これらの「危険地帯」に、工場や倉庫、港湾や空港、鉄道駅を集中させ、
日本中から労働力をかき集めて、巨大都市を作り上げた。

結果、日本は高度経済成長を達成したわけだが、今になってみれば、
この国策は、極めてリスクの高い賭けに出て掴んだ成果だったと言える。

工業生産と輸出による経済成長が望めない今となってしまえば、
ただただ、国民の半数近くが、危険な沖積平野に取り残されている状態だ。


【農業生産を地方の中山間地に委ねている問題点】

もっと言えば、その反動ともいえる側面もある。
元来、湿地帯であり、広大な面積を有する沖積平野は、水田の好適地である。
が、そこに工場が広がり、住宅と商業地が広がったせいで、
米作りの担い手は、中山間地帯に暮らす人々に委ねられるようになった。
当然、こうした地域の耕作可能地は狭い。

当地の人々は、少しでも耕作面積を確保しようと平地に田畑を作り、
自らの家屋は、山地との境界ギリギリの場所に建てるようになった。
あえて書くのも胸が苦しくなるが、かくして土砂災害被害が後を絶たない。


【驚くべきことに、防災予算は減少の一途】

明治維新から150年、終戦から73年、それだけの歳月をかけて、
片時も休まず追及してきた、経済成長至上主義の国土形成である。
今さら急に、産業構造と人口分布を大転換することなど無理である。
であれば、当面は防災を徹底するしかない。

ところが、我が国の防災予算は、この20年、一貫して減り続けている。
これだけ災害が頻発しているのだから、「まさか」と思う人もいるだろうが、
実際は以下のとおりである。<内閣府まとめ ※平成29年度は速報値>

平成09年度……災害予防/1兆1471億円 国土保全/2兆147億円
平成14年度……災害予防/1兆2030億円 国土保全/1兆9817億円
平成19年度……災害予防/7068億円 国土保全/1兆3322億円
平成24年度……災害予防/5610億円 国土保全/7904億円
平成29年度……災害予防/5249億円 国土保全/1003億円

財源の移動や予算項目の変化による側面もあるとはいえ、
自然災害の脅威の増大と反比例する予算の推移には、言葉もない。


【起業家による防災ネットワークが不可欠の時代】

国が、あれこれ物入りであることはわかっているが、
近代化150年のツケが、一気に襲いかかってきている今、
優先すべきは、やはり国土の強靱化だ。国民の命あっての経済である。

同時に私たちは、国が相変わらず動かないことも念頭に置き、
自らができる防災、そして仲間たちでできる防災を進める必要がある。

ビジネスは、自らがいて、顧客がいて、従業員がいて、
商品があり、事業所があり、さらには交通や情報インフラがあって、
かろうじて成り立つ、実は、きわどい行為である。
それらの一部にでも支障をきたせば、それはたちまち行き詰まる。

国の改心は待てない。自らのビジネスと生活を守るために、
つまり、この日本で生きて稼いでいくために、私たち起業家や経営者は、
学び合い、助け合う防災ネットワークを構築する必要がある。

NICeも、その観点での活動を強化していく考えだ。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.73
(2018.9.21配信)より抜粋して転載しました。
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