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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
TPP議論を主体的な日本づくりの機会に!


TPPに関心を持つ人が増えてきた

9月19日開催の「NICeチャリティーセミナーin鹿児島」や、
9月23日開催の「NICe全国定例会in名古屋」での基調講演において、
その3分の1ほどの時間を、「TPPの本当の狙いは何か」に割いた。


端的にいえば、いま、起きているTPP問題とは……、

経済悪化と高失業率とに苦しむアメリカが生き残りを賭け、
資産の潤沢さと信用の高さにおいて抜群の日本市場を獲得するために、
もともとあったTPPの枠組みをうまく活用し、
「多国間の合意事項」として、日本市場の開放を強力に迫る攻勢であり、
それに、日本経済が耐えられるのかどうかという問題である。

【アメリカの主眼は製品輸出入にはない】

政府やマスコミ、経済団体がさかんに言いふらしている、
農業製品や工業製品の輸出入にかかわる関税撤廃問題は、
首謀者たるアメリカにとっては、それほど優先順位の高くない項目である。

どの国においても似たりよったりの状況だが、
「モノ」の値段は下がりこそすれ、上がっていくのは難しい。
農作物しかり、機械しかり、製品しかりで、
それらは「過剰」に生産され続けている状況だからだ。

ゆえに、それらにかかわる関税や非関税障壁を取り去ったところで、
アメリカにとって、そう大きな「うま味」はないということだ。

であれば、何が(どんな商品が)おいしいのか?

サービスということになる。

サービスの中でも、アメリカが日本において獲得したいのは、
金融市場・保険市場だ。
とりわけ、対外開放していない「共済」市場、あるいは「簡保」市場への進出を
アメリカは重要な目標としている。

また、労働者の日本への輸出にも積極的で、
医師や弁護士など、高額報酬を狙える職業の規制撤廃を求めてくる。

そのほか、投資市場や特許市場なども、
アメリカが対日市場獲得で重視している分野だ。

そして政府調達、いわゆる公共事業だが、
これらの入札権限の緩和も強く求めてくると考えられている。

【アメリカ&小国軍団vs日本】

冒頭でも触れたように、TPPは、
環太平洋の名を借りたアメリカの本格的対日攻勢ということだ。

この構図に、他の参加諸国は特別文句はない。

ペルー、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、
シンガポール、ブルネイ、マレーシア、ベトナム。

顔をぶれを見れば一目瞭然だが、
アメリカから「開放しろ!」といわれて困るような金融市場を
ほとんど持ち合わせていない国々ばかりである。
ということは、アメリカに脅されることもないし、
また、アメリカが売りたいサービスと競合するわけでもない。

これらの国は、日本に農産物を売りたかったり、
安価な労働力を売りたかったりするので、
もろもろの思惑はあれど、
アメリカが日本をTPPに引き込むことに、最終的には賛意を示すだろう。

この「劣勢な構図」に対して、日本はどのような勝算があるのか?

子分をたくさん引き連れた大親分(アメリカ)に対して、
どのように、この土俵(TPP)で闘うというのか。

その戦略と方針を政府もマスコミも財界もまるで示していない。

「平成の開国」などと、触れ回る人々がいるが、
市場を開けて、全部ぶんどられて、それでどうするのか?
どう逆転できるというのか?

その作戦があるのなら、国民に開示すべきである。

【そもそもデフレ下ではありえない政策】

もっとも、長期的なな逆転勝利の図式があるとしても、
デフレギャップ(需要より供給が上回る状況)が、
まるで解消されないこの日本に、
関税のかからない低価格商品がジャンジャン入ってきたら、どうなるのか?

この間、生じている、
価格下げ→収益悪化→人件費カット→低所得者増加→再価格下げ→……
の悪循環をいっそう加速させてしまうのは目に見えている。

百歩ゆずって、TPPに活路があるとしても(ないと思うが)
少なくとも、この経済状況下において選択するような政策ではない。

【食糧安全保障をゆるがす非関税障壁撤廃】

すでに各地において話してきたように、
加えて、TPPはあらゆる非関税障壁の撤廃を求める動きであり、
そこに食糧の安全・安心は存在しなくなる。

農産物に関して言えば、残留農薬基準が大幅に緩くなるし、
遺伝子組み替え作物の表示義務が解除される。
怖い話は、まだまだ、いくらでもある。

【政府はTPPの意図をなぜ隠す?】

行き先を失ったドルとアメリカ経済を救うために、
そこまで、この国の経済と安全を犠牲にする必要があるのか?

それでもTPPに参加するというのなら、
日本はアメリカから、経済や安全と引き換えに何を取るのか?

対中国+対朝鮮半島の防衛ラインの米軍事力の強化か?

それならそうだと言ってくれ。

TPPの全容も詳細も語らず、
あたかも農業が問題のように見せかけてまで、
政府が守りたいものは何なのか?

「バカな国民に真意を伝えたところで理解できるはずがない」
という、毎度お馴染みの論理なのか?

だが、もう日本人は昔の、ことなかれ主義一辺倒の日本人じゃない。

少なくとも、お国を信じていれば大丈夫などと思う日本人は、
ほぼ消え失せている。

原発問題や防災問題で、政府のでたらめぶりを知った日本人は、
時間の問題でTPPの本質にも気づくだろう。

アメリカをはじめ、どの国も本当に必死だ。
世界は、どこもかしこも苦しいのだ。

アメリカはアメリカで全力をあげてこの作戦に取り組んでいる。

日本も必死にならずしてどうする。

【TPP議論を主体的な日本づくりの機会に!】

震災後の日本中の取り組みを見れば、
この国の民が「バカばかり」などと、どうして言えようか。

アメリカ、中国、欧州……。
強い国々に対して、いいようにされないために、国民みんなの力を集める。

それが日本の取るべき道筋ではないだろうか。

TPPは、
日本人が本当に力を合わせて頑張るのか、
もうそんなことはあきらめるのかの、分岐点になる事柄だと思う。

安易に賛成だ、反対だ、ではなく、
自分たちの未来はどういう未来がいいのかを含めて
全国民を挙げて議論すべきであり、それができうるチャンスが今である。

長い文章の結論。

TPP問題を、主体性あふれる日本づくりのチャンスに転化しよう!

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

 
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