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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
なぜ韓国はTPPに参加しないのか?


本日10月24日、経団連の米倉会長と会談した玄葉外務大臣は、
「交渉に入らないと得られない情報もたくさんある」と述べ、
TPPに前向きな姿勢を示したことがニュースで報じられた。

いよいよ、TPP議論が本格化してくる様相である。

さて、多くの方がご存じのとおり、
このTPPへの参加を早くから強力に推進しているのが経済産業省である。

経済産業省は、その根拠として、
『日本がTPP、EU、中国とFTAを締結せず、
韓国が米国・EU・中国とFTAを締結した場合、
日本の自動車、電気電子、機械産業の輸出が10・5兆円減少する』
という試算をあげている。

いささか、ややこしい説明だが、
とにかく「TPPに参加しないと日本は損をする」と言っているわけだ。

ちなみに内閣府や農林水産省の経済効果試算はこれとは大きく異なっている。
が、今回は、そのことは置いておき、
経済産業省が意識している韓国について言及していきたい。

もう一度、経済産業省の試算の説明文を見てほしい。
ここからわかることは、
「韓国はTPPに参加しない」ということだ。

環太平洋圏でもあり、典型的な輸出経済国家の韓国が、
なぜTPPに参加しないのか?

別の言い方をすると、
「なぜ、アメリカは韓国をTPPに引き込もうとしないのか」
ということになる。

すでに10月18日の私のNICe日記において、
「TPP問題とは、アメリカが多国間の合意を盾にして日本に市場開放を迫るもの」
とその概略を説明した。

であれば、アメリカは、
アジア経済の成長株である韓国を、日本同様に狙ってもいいのではないか。
そう思えてくる。

なぜ、そうしない?

実は、アメリカは、とっくの昔に韓国市場を掌中に収めているからである。
こんな言い方では、生ぬるいかもしれない。
韓国経済は、すでにアメリカ資本を筆頭とした外資のものだからである。

まずは以下を見てほしい。韓国主要企業の外資出資比率である(2004年)。

●サムスン ……外資比率60%
●LG ……外資比率50%
●ボスコ……外資比率58%
●現代自動車……外資比率49%
●SKテレコム ……外資比率55%

日本に置き換えてみれば、
日立や東芝や新日鉄やトヨタやNTTドコモが、
外資系企業になってしまったというような話だ。

さらに言えば、外資は企業だけでなく、
韓国の金融機関も我が物にしている。

以下の資料は、やや古いが極めて貴重なデータである。



画像が見にくいかもしれないので、
かいつまんで紹介すると、韓国主要銀行7行のうち、
1行を除いてほかはすべて外資系になってしまっている。

●国民銀行……外資比率85.68%
●ウリィ銀行……外資比率11.10%
●ハナ銀行……外資比率72.27%
●新韓銀行……外資比率57.05%
●韓国外韓銀行……外資比率74.16%
●韓美銀行……外資比率99.90%
●第一銀行……外資比率100.0%

要するに、韓国の大手企業も大手銀行も、すでにすべてが、
アメリカをはじめとした外国資本が所有しており、
そうであれば、いまさら投資市場を開放せよと迫る必要もなく、
むしろ、アメリカと韓国とは「身内同士」なのだから、
いいように米韓貿易に関する協定を結ぶことが可能だということだ。

経済産業省は、各種の工業製品市場が、
この「身内同士」の取り引きに奪われることを懸念しているのである。

ところで、一体いつから韓国経済は外資に牛耳られようになったのだろう?

ご記憶のある方もいらっしゃると思うが、
1997年に発生したアジア通貨危機がことの発端だった。

タイで発生したアジア通貨危機は、ほどなく韓国のウォン危機へとつながった。

対ドルで大暴落したウォンのせいで、
韓国が準備していた米ドルでは決済ができない事態に至り、
やむなく韓国はIMF(国際通貨基金)に救済を求めることになった。

IMFは、資金供与に応じたが、その条件はすさまじいものであり、
当時、
「韓国はIMFの植民地になった」
とまで言われたほどである。

いわく、ドルの貸し出し金利は40%!
くわえて財閥解体を含む構造調整と財政改革を同時に行え、
さらに、投資市場を対外開放せよ、というものだった。

借りなければ国家破綻。借りれば外国の植民地。
たしか当時の韓国大統領は金大中氏だったと記憶するが、
いかばかりの苦悩だったことだろう。

韓国はIMFの要求を受け入れ、結果、
万単位の企業や銀行が半年強で消え、200万人が失業する事態となった。
※単純に韓国に起きた事態と日本とをアナライズさせることには無理があるが、
 市場を開放することの恐ろしさの一端をここから知ることはできる。

IMFは国際機関とはいえ、「ドルの番人」であることは誰もが知るところであり、
それは、つまるところのアメリカ経済の番人ということである。

ゆえに後日、韓国の通貨危機を仕組んだのは、アメリカではなかったのか、
という声も多く聞かれるようになった。

もっとハッキリ言う人だと、
「武力を使わず、通貨を使って、アメリカは韓国を侵略した」とまで語る。

アジア通貨危機自体はアメリカが意図したものではなかったかもしれないが、
(アメリカ系ヘッジファンドが危機を加速させた面はある)
アメリカが、このチャンスをつかんではなさず、
すでに余り始めていたドルの「絶好の使い道」にしたことは間違いない。

かつて韓国が飲まされた苦渋を、今度は日本が飲むことになる。
TPPには、その危険が十分に広がっている。


【まとめ】

(1)韓国がTPPに参加しないのは、すでに韓国市場が欧米資本に牛耳られているため。

(2)したがって欧米-韓国という身内ラインの攻勢を、
経済産業省や日本の製造業界は危惧している。

(3)国内の投資市場・金融市場・製品市場・労働市場を対外開放すると、
それが国内経済に及ぼす衝撃ははかりしれなく大きいものとなる。

(4)TPPで検討されている項目も、
上記(3)に述べた各種の市場開放を日本(を含む参加国)に求めるものである。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

 
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