■NICe東京定例会 第1回 2009年 5月25日
第2回 2009年 6月29日
第3回 2009年 7月27日
第4回 2009年 8月31日
第5回 2009年 9月28日
第6回 2009年10月26日
第7回 2009年11月30日
第8回 2010年 1月30日 (特別) NICe東京定例会レポート
第9回 2010年 2月22日

 第6回NICe東京定例会レポート

 


2009年10月26日(月)、リーダーズサロン『なみへい』にて、第6回「NICe東京定例会」が開催された。台風20号接近に伴う悪天候にも関わらず、初参加13名を含む総勢41名が勉強会に参加した。




■開会のあいさつ
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第6回のプレゼンテーターを務める
行政書士石井亜由美事務所
代表・石井亜由美氏
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NICe東京定例会
実行委員長・佐藤浩司氏
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NICeチーフプロデューサー
増田紀彦氏
NICe東京定例会の実行委員長・佐藤浩司氏の司会でスタート。ファシリテーターを務めるNICeチーフプロデューサーの増田紀彦氏にマイクを渡した。

増田氏はまず、NICe東京定例会の開催が、年内では今日と来月11月を残すところだと述べ(12月は開催なし)、現在、全国で開催されているNICe交流会について、近況を報告した。

「今月はNICe交流会が全国各地で花盛りです。和歌山市、姫路市、福山市、さいたま市、そして昨日は熊本市、今日はここ東京で、この後も、31日に大阪市、11月1日には郡山市、それ以降も各地で続々と開催されます。私はできる限り開催地にお邪魔して、なるべく各地の情報を詳細に皆さんへお伝えしたいと思っています。どこでも感動的な出会いが繰り広げられ、またビジネスにおいても、参加者同士の有益な情報交換がありました。それをまた持ち帰って、SNSを通じて、日記に公開したり、メッセージで情報交換がなされたりと盛り上がっているようです。私も熊本でのできごとをNICe日記に書きました。加藤清正公の像にあいさつをしに熊本城へ行って、ドブに落ちたりしまして(笑)。そんな日記に、いっぱい反応があり、コメントをくださって嬉しいです。皆さんは、NICe機能のひとつ、NICeポイントをご存じですよね? 自分のホームを見ると、点数が溜まっているでしょう? あれは、誰かがポイントを押してくれたということです。4800人を超えるNICeメンバーの中で、最もNICeポイントを押してくれているのが、佐賀県の武内さんという方です。自動NICeポイントクリッカーか何かを持っているんじゃないかと思うくらい(笑)、皆さんにポイントを付与してくれています。その武内さんが、佐賀から車で3時間ほどかけて、熊本イベントに来てくださいました。初めて生の武内さんにお会いできたのですが、実際、講演中、スゴい回数うなずいてくださるのです。まさに第一級のメンターだなと思いました。クリックが多いのも納得で
  す。武内さんに限らず、各地には本当に素晴らしい方々がいて、会いたくなって、たとえ遠くでも会いに行こうという動きが起きています。その流れのひとつと して、今日も、ここでの勉強会となりました。大いに、そしてしっかり、やり取りをして、意義ある1日にしたいと思います。よろしくお願いします」
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■プレゼンテーション&質疑応答
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行政書士石井亜由美事務所の代表・石井亜由美氏が登場し、自己紹介からプレゼンテーションを始めた。

行政書士として、遺言の作成や相続手続きに関わる中で、「もっと依頼者が自由に、本当に遺したいことを、遺したい人へ確実に伝える術はないか」と模索し、スタートさせた新事業が「ラストレター ?あなたから大切な人たちへ最期のメッセージ?」だと、まずは事業化の動機を述べた。
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ラストレターとは、依頼者から手紙などを預かり(依頼者が自ら記し、封をし、宛先まで書いた状態で)、銀行の貸金庫に保管し、依頼者の死が確認できた後、 その手紙を本人限定受取り郵便で指定の相手に送るというサービスだ。ラストレターに書く内容は、感謝の気持ち、遺したい・伝えたい言葉のほかに、業務引き 継ぎ、事務処理、パソコンや写真のなど他人に見せたくないものの処理依頼など。ターゲットは、シニア層以降も含まれるが、石井氏は特に、既婚30代と経営 者を希望していると述べた。
価格は、初年度29800円、次年度から19800円。複数への郵送希望は1通プラス2000円。オプショナルの委任状戸籍取得年間3000円。預かりの サイズは、80円の普通郵便料金でポストに投函できる大きさで、それ以外はオプショナル対応。紙類の他に、DVDなど、郵便ポスト受付&貸金庫で保管でき るサイズなら可としている。

システム上、依頼者の死を確認できた後に配送するサービスであることから、死の確認方法は2通りを想定している。ひとつは、依頼主が身内などにラストレ ターの存在を明かし、死後に石井氏へ連絡するよう伝えておくケース。この場合は、通報者から死亡確認ができる除籍謄本・死亡診断書などを送付してもらい、 死亡を確認できた後に配送する。また、依頼者がラストレターの存在を誰にも明かさない、あるいは身寄りがない場合。これは、依頼時(生前)に依頼主とその 旨を確認できるので、委任状による戸籍謄本取得オプション契約を交わしておく。そうすると、保管契約期間終了時に更新がない=死亡の可能性がある、と判断 し、委任状にて戸籍謄本を取得し、生死を確認できるしくみだ。

想定される競合は、遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言)、エンディングノート、自分史を挙げ、それらに対し石井氏は、差別化のポイントを明確に述べた。ま ず、遺言はその存在を秘密にしておくと、発見されないケースが多々あること。さらに自筆証書遺言は、発見されても開封時に裁判所で検認するなど手続きが煩 雑。公正証書遺言は、作成費用に5万?8万円かかり、公証役場へ出向く手間もかかり、死後に役場から遺族へ通達することもない。しかも、記載内容は法律行 為に限られ、相続人にのみ帯するもで、友人知人へのメッセージを記すことはない。また、エンディングノートや自分史は、遺したいと思う側に立ったサービス であり、それに対してラストレターは、遺された人が喜ぶサービスであることが最大の違いだとアピールした。

最後に課題として、広報、集客、アライアンスを挙げ、そのほかにサービス内容、運営システムの改善点、問題発生時の改善策など幅広くアイディアを求めたいと、プレゼンテーションを終了した。

増田氏「これから皆さんと意見交換をしていきます。通常の勉強会では2段階に分けています。前半はこの事業そのものについての質疑。後半は相談があった課題に対する提案。ですが今日は、相談内容が多く、なおかつ、事業そのものの仕組みとも関わっている部分が多々あので、いつもの進め方と変えて、思うところをどんどん話し合っていこうと思います。

さて、石井さんのビジネスモデルは、皆さんにも身近なテーマですから、わかりやすい話かと思います。でも、ということは、突っ込みどころも満載かなと思います。前提としてまず、市場はあるのか、ないのか、を確認したいですね。
市場は……、ありますね。ほぼ同様のサービスを展開、先行している企業もあります。たとえば『e遺言.com』。石井さんの事業は紙類での郵送ということですが、ネットでのサービスです。さて、石井さんのビジネスモデルだと、1度封をしたら、どうなのでしょう。『あぁ、しまった!』となったら、書き直しはできるのですか? あ、何回でもできるのですね。ネットほど、すぐにその場で更新ということではなくてもね。先ほどのプレゼンでは、競合名に挙がっていなかったけれど、こういう違う方法論やメッセージのものと比較もできるかもしれませんね。

いずれにしても、この市場が来ていることは間違いないでしょう。ですが、まだ市場が形成されたといえる段階ではないと思うので、市場を早く掴んで、準備をしておくことが大事だと思います。さて、ところで、こういうサービスは以前にあったでしょうか? そもそも、なぜ今、出てきているのでしょうか。以前はなかったのに、石井さんやあるいは他の人が思い付くように、なぜ事業化されてきたのでしょうか? それがわからないと、市場の掴み方がわからないと思うので、そこから話し合いましょう」

豊島氏
「死生観が変化してきているのかなと思います」
増田氏「前はどうだったのでしょうね。どういうものがどう変わったと思いますか?」
豊島氏「今までの死生観だと、病気になって、スゴく辛い思いをして、周りからも悲しまれながら亡くなっていく。それが今は、自分の死を少しでも美しく飾ろうと。決してネガティブなだけでなく、死んでも自分の意志を遺したり、先へと続いていくストーリーがあるんだと。遺産などの部分だけの遺言ではなく、ポジティブな部分での次のステージに自分の意志を遺そうと。そういう死生観になっているかなと思います」
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増田氏「豊島さんのご意見にありました遺言。従来の遺言というのは、物的な財産の相続という部分ですね。精神的なものは、遺書という形で伝えることはできるけれど、決して面白いような話が書いてあるわけではない。遺すものというのは、資産計上できるものを遺してあげないないといけないと思っていた。それが、今はそうじゃないものを遺したい、という価値観に変わってきている他にどうですか?」
一瀬氏「ひとりで住んでいる人が今、増えてきていると思うんです。若い方も、高齢者の方も。そのあたりじゃないでしょうか」
増田氏「プレゼンで挙がったセグメントに、30代、既婚者へ主に勧めたいと言っていましたが、独居の問題は絶対ありますよね。コミュニケーション手段は発達しているのに、一緒に生活する共同体が減っていますから。核家族化の影響もあるのでしょう。他にどうですか? なぜ、今なのか」
敷田氏「生命保険文化センターの全国実態調査によると、30、40、50代の死亡原因2位は自殺です。どうして起こりうるか考えると、コミュニケーション不足。家族、同僚、社会とのコミュニケーションが取れず、誰にも相談できず、自殺をすると。突然死といいますか、気が付いたら亡くなっていた、誰にも知らせていなかった、みたいなことがある。ということで、コミュニケーションの不足が生じているところにあるんじゃないかと」

増田氏「なるほど。逆に言うと、ラストレターを書くような相手がいるならば、孤独感にさいなまれないのだから、死んじゃおうって気持ちに歯止めがかかる、ということはありますかね」
敷田氏「あると思うんです。ただ、『助けて』となかなか言えないですよね」
増田氏「自分が死んでからの話より、今の自分の苦しさのほうが問題だと。そうなるとそういう問題になりますね。一瀬さんが言った、独居。孤独ならメッセージを遺す相手すらいないとなりますしね」
一瀬氏「死に対してラストレターを書くということは、自分の生に対して意識をすることにつながると思うんです。死を覚悟して生きるのと、漠然と生きるのとでは、歩み方が変わってくると思うんです。そういう意味でも有意義なものになる可能性があると思います」
増田氏「なぜ、今これが、という課題に対して、逆説的な解釈かもしれませんが、いろんな人達にありがとうと言葉を贈る。ラストレターは死に関するモチーフでありながらも、より良い生き方を訴える側面もあるのかもしれません。この部分をもう少し耕したいのですが、どうですか?」
清水氏「私、来月から葬祭カウンセラー養成講座を始めるのですが、この中にもエンディングノートがあります。フォーマット化されていて、何度も書き直せるノートです。消費者センターなどでこのようなセミナーをやると、定員50人のところ、倍ぐらいの申込者があるそうです。参加者は、やはりに高齢の方が中心ですが、その方達は本当は、自分の子ども達に聞いて欲しいと思っている方なんです。核家族化しているので。昔は取れていたコミュニケーションが取れなくなっている。死に近付くにつれ、自分の思いなどを語れる相手がいなくなった。入院していても週に1回しか身内でもお見舞いに来られないとか。だから、こういうサービスが普通になってきたのかなと感じます」

菊池氏「人口は減ってきて寿命は延びている。アメリカの同時多発テロ9・11のように、突発的な事故、新しい病気も増えていたり。若年性痴呆症とか。無理やり寿命が延ばされるようなこともある。そういう社会になってきているので、何かを遺したいと思う人が増えているのではないかと思います」
増田氏「なるほど9・11ですね。いわゆる社会不安ですよね。新型インフルエンザなど、新しいウィルスが出てきたり、今まで想像できなかったようなテロが出てくるとか。あるいは秋葉原の事件のように、そこで死ぬ予定ではなかったはずが、いきなり殺傷される。そういう社会的不安があって、死ということが若年層においても身近にあるかもと感じるようになった。確かに10年、20年前よりは、そういう感覚があるでしょうね。世代を超えて、あるいは高齢化によって、死を意識する人口が増えてきているということがあるのかもしれません」

山田氏「疑問なのですが、誰かにメッセージを送るということは、フィードバックがほしくて送るのではないですか? でも、このラストレターは一方通行ですよね? それなのに、なぜメッセージを遺そうと思うのか、そのへんがわからないのですが」
一瀬氏「私の友人でも、亡くなった人が何人かいるんですね。でも、『お前なぜ死んじゃったの?』という感じがあります。病気だったりとかですが、わからないんですよ。だったら、死ぬっていうのは最後の別れなのだから、何かメッセージくらい友人関係に遺しておけよと。前向きの考え方ですが、これからの時代にあってもいいかなと思いました」

増田氏「今、ちょうど面白い論点が出ましたね。人は何かを言ったら何か返ってくるのを期待するという心理があるんだと。一方で、一瀬さんから、もともと友人関係があるのだから、死ぬ前に何かひと言を遺しておけよと。ではそろそろ、事業に関する質疑に入っていきましょうか」
山田氏「遺すにしても、例えば、スゴい秘密を抱えていて、相手がびっくりするようなことを遺したいとか」
増田氏「ウケたいとかね(笑)。一瀬さんなら、何を言ってほしいですか」
一瀬氏「お世話になりました。さようなら。そんな軽い感じで重たくない内容。グッドバイ、でしょうか」
増田氏「それで、1万9800円? でも、そうですね、遺された友達は、そのくらいでいいから、お前、ひと言いっておけよという気がするかも」
一瀬氏「遺ったほうは寂しい感じです。いつの間にかいなくなっちゃって」
増田氏「短い言葉で、『世話になったな、ば?か』でもいい(笑)」
一瀬氏「(笑)そうです、そうです。明るくなるような」
増田氏「親友間ではウケますしね。山田さんどうですか?」
山田氏「例えば宗教などで、何かを遺すというような教義があれば通用するかもしれません。でも日本人の多くは無宗教で、何を信じていいかわからない。やっぱりフィードバックを求めてしまうと思うんです。日本人の精神の奥底にあるメッセージを、一方通行でいいから遺したいという気持ちは何だろうと。そういうところを、おしなべて平均的にそういう心理があるというのを探っていくことができないのかなと思います」

増田氏「そうですね。遺しておきたい、とは逆で、死ぬならオマエ遺しておけよという、遺されるほうの考えもありますよね。死んでしまうと、互いの話が一致しませんから。その辺の話からさっくばらんに話し合いましょうか。まず、プレゼンの内容について質問はありますか?」
藤原氏「遺言と遺書とラストレターの違いがよくわからないのですが。法律的なものとかは?」
石井氏「遺言は相続人に遺すもので、基本的には財産をどう分けるかなど、法律的行為にかかることしか遺せないものです。ラストレターは逆に、法律的行為に関わらないものを目指しています。『お世話になったありがとう』『生きてきて楽しかったよ』という温かなメッセージを遺したいというものです。遺書は自由に書けるものですが、死後に見つけてもらえない可能性があります。なくす可能性もある。ラストレターは、お預かりする、相手に確実に送るというところが特徴です」

相澤氏「内容に関して、御社ではまったく見ない? ただ預かって発送するだけ? それで事件が起きようが、何かあっても関係ない、ということですか?」
石井氏「そこは一番気にしているところです。何を書いてもいいといっても、公序良俗に反することを書かれては困りますので、そのために、セミナーを開催 し、そこで啓発をするのです、セミナーでは、『読むのは遺された人だから、読む人のことを考えて書きましょうね』と啓発して書いてもらいます。でも実際 に、中身は見ませんので、書かれたものでトラブルがある場合を回避するために、一切責任を負わないと念書を取ります」
相澤氏「それでは、受け取る側にも了解してもらって、受け取ってもらうということですか?」
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石井氏「逆に、受け取る側が受け取りたくない場合もあると思うんです。その場合は、本人限定受取り郵便なので、拒否していただければいいと思ってます。それを受け取った方が、読む・読まないも自由です」
相澤氏「相手が受け取って時点で、料金が発生するのですか?」
石井氏「いいえ。預かった時点で発生しています。ですので、受け取る・受け取らないは、自由なのです。亡くなる方が、この人へ、この人へ、と思って送っても、実は受け取りませんでした、ということもあるかと」
増田氏「受け取らないどころか、送ってきて欲しくない相手とかいますよね、『もう、関わらないで!って言ったでしょ』みたいな(笑)。少し細かいことを聞 きますが、受け取り側はどのように通知されるのでしょう。本人が知る前に家族が知って、『なんか、○○さんって人から手紙が来ているわよ!(怪しい?)』 ということはないのですよね? いわるゆ、局留めですか? 本人限定受け取り郵便というのは、何か通知が来るのですか?」
石井氏「局留めになります。通知だけが届きます。その通知と、本人であることを証明する身分証明を示して、受け取ります。奥さんから『何よ、これ?』では困りますからね」
山田氏「ボイスレターはどうなのですか?」
石井氏「ありです。預けていただけます。郵便物で送れるサイズであればオプションで受け付けます」

増田氏「ここまで聞いていて、このビジネスモデルは事業の方向性がふたつあると思いました。システムをつくって貸金庫に保管し、内容は問わないという仕組 みの素晴らしさがあります。遺言のように紛失しない。公証役場へわざわざ出向かなくてもいい。このしくみを売るのか。あるいは、何か人間関係を大事にしま しょうということを売るのか。セミナーを受けて、『私が死んだらこれやっておいてね』とお願いみたいなこと。生きている間は言いにくいこと。言って泣かれたらイヤだとかもありますしね。『あの時、実は私はこう思っていた』みたいなこととかね。さて、仕組みでお金を取るのか。セミナーを重視して、人間関係構 築部分を大事にして、そのモチーフとしてラストレタ−を使うのか。どちらが儲かるかという話しではなくて、このふたつの側面が出てきましたが、どうでしょ う?」

紙谷氏
「料金設定や、送り先が相続人や家族以外だということを考えると、どうしても、異性の人かなと(笑)。たとえば、結婚したかったけれどできなかった人に何かメッセージとかね(笑)」
増田氏「それがいやなんだよなー(一同爆笑)」
紙谷氏「(笑)あら、意外といいかもよ。それと、もし私が会社の社長なら、社員全員に出したいかな。100人だろうが1000人だろうが、社長として言葉 を送りたいと思います。そうすると、ビジネスとして成り立つかなと思います。友人とかなら、別に突然死んだとしても、わかってくれるのが友だちでしょ?み たいな(笑)。ただ現実には、ラストレターは相続人ではない人が受け取り対象者なので、自分だったら送る相手がそんなにいるかなぁ?と思うんですけど」
増田氏「確かにセグメントによって、とても話が変わってきますね。経営者を対象にして従業員に何かを伝えたいとすると、企業、経営に対するサービスとして のツールになりますが、個人客が相手だとすると、何々のために、というのは難しいですよね。会社だったら、創業の精神をしっかり継いでもらうために、とい う話ができますが、昔の結婚し損なった男だと、まず、その人の住所を探し当てるサービスが儲かりそうですね(笑)。でも真面目な話、個人客相手には、何を 訴えていくのでしょうか。どういう個人のセグメントなら市場の可能性があるでしょうか」

須藤氏
「例えば、離婚して別れた子ども。そういうちょっと限定した部類を考えるとつながるかなと」
増田氏「確かに」
須藤氏「今、ロッカー式のお墓がありますよね。亡くなっても、自宅には帰れない。御棺が入れないから。それで、葬儀場から、お骨になって、そのままロッ カー式のお墓に入る。自宅に戻らないから、近所の人もわからない。もうひとつは、人に知られたくないというケースもあるらしいです。例えばゲイの方。そう いう方が、亡くなって、実はゲイだったと告白するというのもありかなと。死ぬ時までは黙っていたよ、という切り口の伝言もありかなと。ちなみに、そういう ゲイの葬儀が多いという企業さんもあります。要するに、奥さんと同じお墓に入りたくないと」
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増田氏「その葬儀社さんとの連携は考えられますね。ぶっちゃけ、感謝とかではなく、ちょっと生前は言えなかったことがある人、というセグメントの購買意欲 は高い気がします。もちろん、ポジィティブな面で経営者というセグメントもあるでしょうが、逆に、生前は言いたくない、という方面。さきほど、プレゼンの 時に、処理依頼もラストレターの内容に含まれるという話がありましたが、『この写真はすぐに廃棄してほしい』などというのもありますよね。どうしても人 は、公にはしたくないけれど、何とかしてほしい秘密のメッセージを持っているような気がします。そのあたりのご意見はどうでしょう。秘密が多そうな方々、 どうでしょう?」

久田氏「サービスに何種類かあるかと 思うんです。秘密には、やっぱりブラックなことが入らざるを得ないと思うんです。それにより、誰かが不幸になりそうな、でも、自分には大事だったり、逆に メッセージを伝えることで、誰かをその不幸から守るというようなラインのもの。それがひとつ。もうひとつは、もしかしたら生きている間に誰かに見られるか もと思うと、いいことを書くのではないかと思うんです。だから、単純に金庫があって、暗唱番号みたいなものがあって、自分と石井さんの会社だけが知ってい る。その金庫にいっぱい手紙を入れておく。自分とセンターだけが開けられる。頻繁にメッセージの入れ換えもできて、宛先に住所は必須記入ではなく、宛名の あるものは届けてください、みたいな。そんなシンプルなビジネスモデルはないのかなと。もうひとつは、その値段だと、何かプレゼントがいいなと思います。 結婚する時とか。子どもが生まれた時とか。そういう展開ができるかなと。半分見られるかも知れない、というニュアンスが残ったほうが、幸せなメッセージを 遺すかなぁと」
増田氏「やはり何とおりかが考えられますね。預かるのではなく、手元に金庫、ラストレター専用金庫みたいなものね(笑)」
久田氏「生きている間は自分でその金庫を持っておけばいいとか」
増田氏「亡くなった時に、遺族が『これ、開けろ!』と開けさせて、他の人宛のメッセージを見られる可能性がありますが、預かってもらっていたら、それはできないわけですよね」
一瀬氏「やはり見られる可能性があるところがミソ。だから変なことは書けない」
久田氏「見られる可能性があるから、幸せなことを書くんじゃないかなぁと」
増田氏「そうですね。恨み・つらみではなくてね。なるほど。これはどこを狙っていくかで本当に変わりますね。紙谷さんの意見にあった経営者、須藤さんの、ちょっとワケがあって会えない子どもや、ゲイセクシャルの方々。ワケがあって、社会的にオープンにできないグループ。むしろ見られることを前提としたサービス、他にはどうでしょう? 誰を狙うか」
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一瀬氏
「先に言ったように、一番軽いパターンで、『さようなら』っていう程度のもので、中身もオープンにしてしまう。預かっているのは石井さんのところ。それだと変なことも書かないし。あっ、でも、さよなら、じゃ、商売にならないかもしれませんね(笑)」
増田氏「確かに料金的なこともあるのですが、私も仲間が亡くなったりすると、まだ若いので、お通夜とかでも盛り上がるんですよ。その段階で、お棺の周りで酒を飲んでみんなで笑っている時に、亡くなった人から『おい、一瀬。きっと今ここで酒を飲んでいるだろ? でも、お前には世話になったな』とか。その場でメッセージがあったら、スゴい嬉しいと思うんですよね。たぶん、一通に何人もの人へのメッセージを書いちゃうとは思いますけれど。自分が死んだ時のお通夜、本葬用にとか。あっ、でも、システム上、公的な死亡書類での確認後に配送だから、間に合わないのでしたね。それじゃ、これは家族に頼んでおけばいいのか」
一瀬氏「そこで必ず読み上げられるような仕組みをつくれば、それはそれでビジネスモデルの強みになるかなと、テクノロジーで解決するかなと」
相澤氏「それをいうと、さきほど葬祭カウンセラーという話が出ましたが、基本的に葬式を執り行う前に、そういうプランにしましょうと提案のやり取りをしていると思うんですよ。互助会など前もって年会費を払っているでしょう? そういうところに相談しているので。そういう組織があるところにサービスを提供していくこともありですよね。そうすると、意外に逆で、今までなかった葬儀が演出できて、みんなハッピーになれるんじゃないかな?と」
増田氏「そうですね。葬儀屋さんにとっての差別化になりますね。自分のところで保管するのではなく、そうしたことを専門にしている責任ある保管機関と提携してやっているほうが、葬儀業者にとってもいい。BtoBで考えると、そういう発想もありますね。他に狙えそうなところ。どうですか?」

古沢氏「医療機関や老人ホームですとか。基本的に死に近い立場の方々。もちろん身近な人へメッセージを遺したいと思っていると思うんです。ただし、アポの取り方が難しいかなと思うのですが、愛がこもった言葉が得やすいかなと」
増田氏「石井さんの資料にもシニアマーケットは入っていましたが、希望は30代とのことでした。ちょっと違っていますよね。普通に考えると古沢さんが言われたように、高齢の方、あるいは今、健康ではない方。リアルに死を意識する状態のほうが、近い気はします。でも、石井さんはそこをあえて、そうではない層を狙いたいと思っているのですよね?」
石井氏「基本的には、関心が高いのはシニアだとは思っています。需要も高いとは思います。でも、若い方に広めたいという方針です。実際と違うかもしれませんが」
増田氏「この事業がなぜ悩ましいかというと、ゼグメントが人間全部に当てはまるからなのですね。『いや、俺は死なない』という人はいないですから。パソコンできる人・できない人、というのは分けられますが、死は、対象がすべてに当てはまる。ビジネスとして狙え過ぎる。若い人だって死ぬし、お年寄りも死ぬし。誰だって死んじゃうんですからね。でも、その中で、一番の市場になりそうなところをちゃんと抽出しきっていかないと、事業化が大変かなと思いました。今、皆さんから挙げてもらいましたが、誰でもいける、となってしまう。それで何とおりもやっていたら、管理コストが合わないですよね。最初の突破口をどこに置いていくのか。そこで事業化できたら、次に第2のセグメント、というように、事業展開をしていったらいいと思います。八木さんは看護士さんですから、たくさん亡くなられる方に立ち会ったご経験あると思うのですが、その辺りでコメントいかがですか」 
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八木氏「はい。私は実際に、直に向き合って、今、仕事をしています。エンディングノートのようなものをつくる予定も進めています。それは、自分の行き方を考えて、死に方を考えていこうという、自分史を含めて書いていくものです。石井さんのラストレターのような、ありがとうメッセージというコーナーもつくってあります。人間、死ぬ時に、恨み・つらみを言う人って、ほとんどいらっしゃらないですね。あの時はよかったね。こうだったねって。本当は悲しいはずなのに、周りの人が来てくれた時は、笑顔でお話しするんですよ。だからたぶん、ありがとうというメッセージがいいんじゃないかと。今日のテーマでいうと、定年退職の時に、ラストレターを書こうという形がいいんじゃないかなと。私は今、団塊世代へ、これからの人生見つめるために、エンディングテーマのようなノートを書こうという活動をしようと思っているところなんです。シニアについては、元気な高齢者が対象かと思います。有料老人ホーム。お金がある方で、そういうところにもしっかり払える方。そういうマーケットがあるんじゃないかと思います」
増田氏「そうですね。本当に相手によって、やり方やアプローチが違いますね。菊池さんはどうですか? お子さんは何年生でしたっけ?」
菊池氏「小学校3年生と幼稚園児です」
増田氏「その子達はまだ、お父さんが何をして頑張って、どういうことをやってきたのかを、口で言って理解できる歳ではないですよね? 親がスゴかったとわかるのは、自分が働くようになったり、親になってからだと思うんです。私の母は、子どもの時に死んだので、母親が何を考えていたのか、わからないのですよ。大人にならないと大人のことわからないので、小さな子どもに対して、何かを遺したい、お父さんはこの段階でこんな風に頑張っていたと、遺したくはないですか?」
菊池氏「はい。今考えていたんですが、親は誰に贈るかというと、やはり子どもだなと。例えば、15歳ってとても多感な年齢で、いろいろあるじゃないですか。それで考えると、死んだらもちろん届くけれど、生きていても、15歳になったら届くみたいなものもありかなと」
増田氏「そうか。死んだ菊池さんの問題じゃなくて、伝えたい相手の問題として、15歳になったら届くと。たぶん、ラストレターに限らず、生きているとなると、また話の展開が広がっていくのでしょうが、でも、あるんですよね。普段は伝えられないけれど、先になってから伝えたいこととか。15の中学生最後の時に、これを大事にしろよとか。いろんな形がありますね。これ、本当に整理していかないと、何とおりにもなって、大変です」

阿部氏「私の実体験ですが、母親が3年ほど前に亡くなりまして。自分の幼少時期のことが明らかになっていなくて、今それがスゴく残念に思えて……。受け取る側の思いです」
増田氏「そうですね。最初の一瀬さんの友だちの話しもありましたが、受け取る側も、何かやっておいてくれよ、というのもあるかもしれませんね」
山田氏「僕は、受け取る側の気持ちで考えると、故人に会えるのはお墓ですよね。お墓で故人の声が聞きたいです。お墓で音声を再生できるサ−ビスとか」
増田氏「音声認識システムを入れておいて、相手の名前を呼ぶとか。『かぁちゃん』と言ったら、『何だい!』とかね。仏壇でもいいかもしれません。仏壇の前で何かブツブツ言うと、答えてくれるような」
藤原氏「亡くなった人じゃなくて、認知症の方が元気なうちに言葉を遺すのもいいのかなと思います。つい先日、亡くなった南田洋子さん。テレビを見ていると、そう思いますね」
増田氏「南田さんは女優さんでしたから、お元気な時の音声も映像もがいっぱい残っていますが、普通の皆さんはテレビに出ているわけではないですからね。元気だった頃の声を聞き損なう、ということはありますよね」
阿部氏「ビデオレターとインターネット墓地を組み合わせるとか」
増田氏「本当に話題が広がりますね。それだけ、ご縁が深いことですからね」
小林氏「現実的な話で2点あります。仕事で7、8年前に葬儀業者さんからの相談を受けて、49日に配りたいと、1、2Pくらいの自叙伝&ラストレターを作成する仕事をしました。ですが、時期尚早だったせいか、1回だけで。『可能性はあるけれど、生きている人になかなか売り込めない』と言われました。今ならあるなと。それと、ラストレターのセミナーですが、私もやったことがあります。ラストレターをつくることによって、生きる力を得よう、みたいな。ですが終わった後、そこまでになっていたので、そういうセミナーの会社と組むのもあるかと思います。せっかく書いたんだから保管しますよ、と」
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増田氏「今日はいろんな課題も出ていましたが、いいテーマなので、可能性も大いに広がりましたね。ですが多いだけに、あっちでもこっちでもできそうな気がしてしまう。どこに狙いをつけるかが、大事だと思います。どこかに特化すれば必ずマーケットがあると思います。皆さん、今日はまた活発なご意見、どうもありがとうございました!!」

 

■PRタイム

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八木京子氏
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武田悦江氏
八木京子氏/看護士であり、在宅介護の会社の代表であると簡潔に自己紹介し、新たな活動についてPRした。自分達が患者、あるいは患者の家族という立場になった時、本音が言えたのか。また、医療従事者として、利用者の声が聞こえているのか。そんな疑問から、任意団体『納得のできる介護を考える研究会』を起ち上げた。11月28日には東京・亀戸にある『亀戸文化センター(カナリアプラザ内)』で、「一人の経験はきっと誰かの役に立つ」というタイトルで市民講座を主催すると告知。家族・介護をしている人たちが自らの経験を講演するものだが、こうあってほしいという要求ではなく、ありのままの現状を伝える方針だ。参加費1000円のところ、NICe参加者は無料で招待するので、申し込み時に、必ず「NICe」とご記入下さいと参加を呼びかけた。



武田悦江氏/福島県からの参加。この日から1週間後に迫った11月1日開催「NICe in 郡山」の参加申し込み状況を報告。地元新聞にも掲載され、『こういうイベントを待っていた』との声も届いているとか。小さな起業家向けセミナーですが、ぜひよろしくお願いしますとPRした。

 

■特別PR
 
鈴木一樹氏/5月に開催された第1回NICe東京定例会でプレゼンテーターを務めた鈴木氏が、近況の報告と意気込みを熱く語った(第1回レポート参照)。
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鈴木一樹氏
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福岡市では9月から走行が始まり、また、川崎市では11月から走行が予定されており、福岡ではNHKの取材も受け、メディアへの露出が期待できると報告。しかし、鈴木氏の本拠地である東京では難行中。ちょうど1年前にここ『なみへい』で、「1カ月後には東京で走らせます」と言い、また5月の東京定例会でもその意気込みでプレゼンをしたが、現在、東京都の屋外広告物担当者から、『条例にない』『改造車だ』『安全性の確約がない』『公益性がわからない』などを理由に、都内での走行が難しい状況に陥っている。しかし鈴木氏はNICe内でメンバーに意見を求め、70、80人から、100以上ものアイディアや改善策が寄せられたと感謝の意を述べた。それをバネに挑戦し続けたいと、決意を表明。同時に、これからも広く意見を求めているので、NICeに登録したばかりの新メンバーやこれからの登録者にもアドバイスを、とお願いした。
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また、増田氏からも補足説明があった。NICeでの出会いを機に、広告主として鈴木氏の応援を名乗り出た菊池徳行氏を皆に紹介。そして「素晴らしいビジネ スでありながら、前例がないという理由で事業化できない。準備に時間を要すると、収益化する前に資金不足になる。これは、ベンチャー企業には付きもので す。ですが、ここをなんとか乗り切って、打開して頑張ってほしい。起業家魂の見せどころです。皆さんも有益な情報、物資的な応援、あるいは知恵の応援をぜ ひお願いします」と協力を呼びかけた。


■交流会

20091124141424.JPG 神奈川県から参加した原澤雅和氏の乾杯の音頭で交流会がスタート!! 
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あいにくの雨のため、集合写真は店内で。
室内撮影は定例会初!!縁起がいいかも?
本日の料理は、三陸産 むき牡蠣のムニエルと柿 ワンスプーン仕立て、長野県東御市産 サツマイモとエビのフリット、長野県東御市産 水菜とキノコのサラ ダ、新潟県十日町市産 そうめんカボチャと青のりそうめん、3種類の豆トマト煮込み、長崎県産 目鯛の蒸し焼き、自家製いなりずし。
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定刻22時のお開きタイムを迎えて。
兵庫県から参加した桜井由佳氏のあいさつと、
1本締めで第6回東京定例会は幕を閉じた。

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勉強会の質疑応答を聞きながら、また、交流会中も、参加者の
ために造り続ける料理人・鈴木信作氏

 

 
撮影・取材・文/NICe編集委員 岡部 恵