■NICe東京定例会 第1回 2009年 5月25日
第2回 2009年 6月29日
第3回 2009年 7月27日
第4回 2009年 8月31日
第5回 2009年 9月28日
第6回 2009年10月26日
第7回 2009年11月30日
第8回 2010年 1月30日 (特別) NICe東京定例会レポート
第9回 2010年 2月22日

第3回NICe東京定例会レポート

 



2009年7月27日(月)、リーダーズサロン『なみへい』にて、第3回「NICe東京定例会」が開催され、関東圏はもとより、新潟県、大阪府、広島県、宮崎県などから総勢43名が参加した。




■開会のあいさつ
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第3回のプレゼンテーターを務める
フィールイメージ株式会社
代表取締役 小林健一氏
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NICe東京定例会実行委員会
委員長 佐藤浩司氏
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NICeチーフプロデューサー
増田紀彦氏 
NICe東京定例会の実行委員会・委員長 佐藤浩司氏の司会によりスタート。プレゼンテーターの紹介と、プログラムについて説明し、NICeチーフプロデューサーの増田紀彦氏にマイクを渡した。

ファシリテーターを務める増田氏からあいさつ。
「今日のプレゼンテーターの小林健一さんは、広島からの参加です。また小林さんとパートナーシップを組んでいる桑原良弘さんも参加しています。桑原さんは、NICeのホーム画面の上の方にある『農商工連携シーズガイド』という記事を提供してくれています。桑原さんは、広島と東京を行き来して、中国地方で頑張っている起業家を応援しています。今日は、そんな応援団付きのプレゼンです。

まず、15分間プレゼンをしていただき、その後の主役は皆さんです。課題をクリアするために、よりよい事業にするために、自分ならどうするか。自身の仕事 につながる部分もあるかと思います。自分のビジネスに置き替えて、発展させるために、という前向きな討論をしていただきたい。前向きな意見が次の意見を呼 ぶような展開になって、最終的に知の集積を、わずか1時間弱で成し遂げようというのが目標ですので、今回も集中してお願いします」

■プレゼンテーション&質疑応答

プ レゼンテーターのフィールイメージ株式会社代表取締役 ・小林氏は、技能・技術・研究の「解易化(かいいか)」を推進するビジネスを展開している。この「解易化」とはどういうものか、また、なぜ小林氏がこの事 業で起業したか。そしてどのような課題を現在かかえているのか。レジュメと画像を使ったプレゼンテーションが始まった。

「解易化」とは、難解な仕組みや動きを分析し、わかりやすく見直す行為のこと。これまでの分厚かった文書マニュアルを、映像とCGとアニメーションを駆使 して誰が見てもわかりやすい映像マニュアルに置き換えている。この解易化したマニュアルは、人材育成や技能伝承の時間短縮とスキルアップ、安全・品質・環 境の改善に貢献している。プレゼンではまず、なぜ、この「解易化」が誕生したのか、自身のプロフィールから紹介を始めた。

工業高校機械科を卒業した小林氏は、マツダに入社し、ライン作業に従事。手先が器用だったことから技能五輪の国際大会に出場し、その後、RXー7の生産ラ インに配属。本社工場でISO901、ISO1400リーダーとなり、品質向上のための現場教育に尽力した。その中で、分厚いマニュアルに疑問を持つ。文 書だけでは教育ができない。そんなヒントを小林氏に与えたのが、師匠であり当時マツダの品質本部副本部長だった圓山(まるやま)雅俊氏だった。
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「こ の手順書でいったい何人が理解してくれるんだ。現場には2000人もの人がいる。その中で一番理解力が低い人間にもわかるようなものをつくれ」。小林氏 は、そのためにどうすればいいのかを考えた。テキストやイラストはダメだ。そこで得意なコンピュータを使い、アニメーションと組み合わせたマニュアルを制 作。これが後に、フィールイメージ創業へとつながった。

フィールイメージが推進する「解易化」がなぜ必要なのか、4つの社会的背景を挙げて説明した。ひとつ目は、技能に優れた団塊世代の一斉定年退職による技術 継承の危機。ふたつ目は、活字離れと言われ、わからないことがあっても聞かない若年層世代の問題。3つ目は、サイクルが早い派遣・期間社員のスキルアップ の難しさ。4つ目は、責任は企業側にあると考えるユーザーの問題だ。

ここで小林氏は、「解易化」されたマニュアルとは具体的にどういうものか、以前にテレビ局の取材を受け放送された映像と、実際にクライアントのために制作 し、使用されている映像を上映。その効果のほどを紹介した。小林氏が制作した解易化マニュアルを使うことで、旋盤技術を教える期間は1日短縮できるとい う。これはつまり大手企業でいえば1年間で数億円のコスト削減につながるのだ。また、技能試験の合格率も向上したという効果も紹介した。

さらにプレゼンでは、既存の映像スタジオ系の商品との差別化ポイントも列挙した。その最大の違いは、小林氏自身の経験と技能、プロデュース力だという。

狙う市場は、ものづくりだけにとどまらず、難解な技術やサービスを持つ企業、団体だ。今後の展開としては、個別業務から、メーカーなどの作業マニュアル、 パッケージサービス、飲食店などのサービス業、ASPサービス、webによるコンテンツ提供、コンサルティング業、教材の企画販売、匠の技のカスタムマ ニュアルへと拡大する計画だ。
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小林氏の応援団、桑原良弘氏
  ここで応援団の桑原氏にバトンタッチ。「アニメと映像を組み合わせ、シンプルにわかりやすく、伝えたいところをきちんと伝える。それが小林さんのいいとこ ろであり、人材育成、技術の伝承などに貢献している」と述べ、今回なぜプレゼンに臨んだか、その理由として抱えている課題について説明した。「機密情報を 含む映像のため、新規クライアントに実績映像を見てもらうことが困難であること。また、信頼関係の中でしか新規開拓ができないこと。信頼が置ける、わかり 合える仲間の必要性を感じ、NICe定例会に参加したこと。参加者自身のビジネス、または担当クライアントで該当するような情報を願いたい」との言葉でプ レゼンテーションを終えた。
   
増田氏「文字で読んだり、口で言ったりしてもわからないことを、動いている映像やアニメを組み合わせて見せる小林さんの事業は、たくさんの企業から評価をい ただいているようです。さて、皆さんから意見をいただきたいと思います。前半は、このサービスってこうすればいいのではというご意見を。後半は、メーカー や伝統技能の現場以外の展開の可能性について、意見交換をします。
関連しますが、私も感動した映像ビジネスがあります。もともとはFCのパソコン教室だったのですが、教室ビジネスというのは、教えるのがうまい先生とそう じゃない先生で大差がつきますよね。そこで本部が、ソフトごとに対応して、しかも、わかりやすいだけじゃなく、面白い映像教材をつくったんです。次々に キャラクターが登場して、大げさな身振り手振りで指導してくれる。「ドローして」と言われてもピンとこないことを、「青いところをズズズのズ」とか言う と、とってもよくわかりますよね。そのビデオを使いながら、全国の各教室で教えていたら、とても平準的で覚えやすく、成果が上がったというんです。実は画 像というのは、何本も同じものをつくれるというメリットもありますよね。さて、小林さんの事業はどうでしょう。こういう教え方はどうだろうとか、メリッ ト、デメリットはこんなこと考えられるんじゃないかとか。まず、質問や意見をどうぞ」
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吉田氏「受講生から質問があったり、理解できない時、その画像には先生が映っているけれど、実際に教える人はその場に居ませんよね。何か聞きたいときのフォローが心配かなと」
小林氏「おっしゃる通りです。この教材自体で100%は不可能です。私も板金経験がありますが、例えば、新幹線の先端部分の板金作業をしている方とかいま すよね。その技術は教材映像では伝えられないんです。でも、何もないよりかは、という思いと、教育時間が短縮することは間違いない。足りないものは、実際 のやり取りで補ってもらうしかないんです。ただ、映像を見ることで質問する項目も想定できる。そういう方向には持って行けると思います」
増田氏「なるほど。業種によっては人的サービスも必要かも知 れませんね。コールセンターやインストラクターを組み合わせることも考えられますね。新幹線の先端部分、つまり顔の話が出ましたが、あれ、機械でつくって いるのではないことを、皆さんご存じでしたか? 手でたたいているんです。新幹線なんて、毎日1万台もつくりませんよね(笑)。世界の新幹線ですが、生産 ラインをつくって製造していたら割が合わないんです。そういう類いのものって、多いんですよ」

浦上氏「今、工業高校が少なくなってきた。比例して伝承者も少ないよというような恐れを与えることで、小林さんの解易化を導入しなくちゃ、と思わせられるのでは? そういう数字的なデータは揃っているんですか?」
増田氏「伝承者危機の数字的なものってことですね」
浦上氏「そうです。さきほども派遣社員の教育の話がありましたが、派遣の導入や他社への丸投げをすすめるのではなく、社内で伝承させるために導入させるってところを重視しては」

増田氏「なるぼど。ほかにご意見は?」
藤原氏「私は以前、社員教育の会社にいて、ビデオ教材などに携わっていたのですが、一般的な教育教材とどう違うのでしょうか?」
小林氏「そうですね、自分はいわゆる技能五輪と大手企業でISOをやっていたという経験が上乗せされている点が大きく異なります。それをどう品質の改善や 安全につなげていくか、いつもそれを頭に置きながらコンテンツをつくっていきます。だから、いかに理解力が低い社員にまで落としてこんでいくかを重視して いるので、ただ単につくっていくのではなく、コーディネートをしている、わかりやすいようにしている。そこが、他のスタジオ系とは違うかなと思います。大 手での勤務経験があるから考え方がまるっきり違う、指導もしてくれる、と。そこが評価していただいている点です」
増田氏「藤原さんが言う、社員教育ビデオってどういうイメージのものですか?」
藤原氏「販売員教育とか、技術社員教育などなら実際に動かしている映像を見せながら、安全教育を指導員が話しながらとか」
小林氏「実際にマツダでも、そういう教育ビデオが何本かあることは私も知っていました。ですが教育チームとも話したんですが、これ本当に使っているのかと 聞いたら、正直使っていないと言うんです。なぜ、と聞いたら、社風がまったくないからと。だから、己の会社の己の社風にのっとった安全や品質があるのに、 それが映像に入っていないとダメだと。そこの会社の作業服を着て、それなりに皆が知っている人物が映像に入っているのといないのでは、効果がまったく違う んです。それをどう引き出して、わかりやすい映像にしていくか、というところが私の仕事なんです」
増田氏「映像を撮る前の仕込みの段階が随分と違う、手間も相当にかかっているということですね」
小林氏「はい。そうです」

剣持氏
「小林さんがものづくりの現場に通じていることはわかるんですが、それ以外の業界など、どこまで取材できて、どこまでできるんでしょうか?」
小林氏「お客さまが『ここ、わからない』『これ、伝わりにくい』というところはすべて解決しようと思っています。どんな業界でも。たとえば、とある先端技 術分野のお客さまとのケースだと、自分がわからないところをすべて聞き出して、1カ月くらい勉強します。その後、学者を横に付けて、さらに1週間びっしり 勉強しました。毎日企業に通って、僕のための勉強会を開いてもらいます。でも、そこまでする価値がある、伝わらないものが、見えるようになり、伝わるのな ら、と言っていただけます」
増田氏「小林さんのために、そうまでしてでも、教材画像をつくってもらいたいということなんですね」
小林氏「そうです。逆に、お客さんから言われたのは、鋭い質問がくるね、と。社員みんなが知っていると思っているようなことを平気で質問してくると。とこ ろが、社員の皆さんも本当はそれを知らなかったりして。僕が全然知らないから、いいんです。全然知らないところから理解できるようになるまでのプロセス を、映像とかアニメにする、それが解易化なんです」
増田氏「これは独特の強みですね。藤原さんや剣持さんの質問で強みが浮き彫りになってきました」

横堀氏「せっかく大手企業の仕事を取れているのですから、深掘りすればと思うのですが。ひとつの企業でもっといろんなことができたら、事例が高められるかなと」
増田氏「なるほど。他社や他業種に行かずに、ということですね」
小林氏「私が基本としているのは、業務の合理化を求めて、すでにマニュアルを活用されているところに導入してもらい、その結果、何らかのコスト削減や品質の向上を提供していきたいということなんです」

相澤氏「僕 も、まだコードネームしか付いていないような商品の開発段階からクライアントの話しを聞いて、これをどう広告しようかってことをしています。やがて、量産 するタイミングが来るんですよね。開発できました、良いものです。さて、これをたくさんつくって、売ればば会社に利益を生みます。でも、一番難しいのは量 産すること、同じものをたくさんつくるっていうことです。そこをどうしていくかってことが、たぶん肝だと思うんです。量産するというのは人の手がたくさん 必要なので、人の手の技術レベルをどうするか。量産する時にクオリティをどう保つか、ということがたぶん重要かと思うんです」
増田氏「メーカーさんが血のにじむ開発をして、市場と合致するものつくれたと。さぁいけるぞと言っても、それをたくさん本当につくれるのか。不良品も混ざったら利益も失うわけですよね。それを支えてあげると」
相澤氏「そうです。例えば、化粧品の新商品の開発はできても、それをたくさんつくるというのが難しいんです。ですから単に簡素化やコスト削減ではなく、量産するテクニックやいい品質管理ができるとしたらどうかと」
増田氏「なるほど。むしろ利益創出の肝を支えるということを謳ったらどうかということですね。例えば、1000人の工員の手は同じようには動かない、そこ でいろいろな問題が起きていると。教育コストを下げるというよりも、確実に利益に反映していける。良いものをたくさんつくれる、という課題を解決していく のが小林さんの解易化マニュアルだと。なるほど、素晴らしい視点ですね」

目次氏「私 は映像制作の方から、教育の方へ、eラーニングへと事業を展開していました。映像の場合は点数、成果がわからないのですけど、eラーニングだと事前に全体 テストやらせて、その時は50点だったのが、映像を見て勉強してテストすると何点か上がると。数値が見えると顧客のリピートも増えると思うんです。60分 も映像を見ていると人ってだんだんだれてきて、眠くなってきたりもするんですよね。事前テストやっていると、ある程度、ステップ3ぐらいまでジャンプをか けられる。そうするとコンテンツとしての顧客満足度が上がってくるので、そうしたほうがいいんじゃないかと」
小林氏「eラーニングも考えたことはあるんです。ですが、匠の部分はそれではどうにもならない。技のところですね。マツダにも、いろんな“箱”を提供する 会社が入って来ていましたけど、箱じゃなくて、中身だと。中身をどう伝えるかと、そういう所をどこの会社も重視している。コンテンツがあれば、その後でe ラーニングをすればいいと。私の取材ではそういうデータが上がってきています」

齋田氏「藤原さんの質問に関連していると思うのですが、売り込む時にどういう特色を出していくのか気になりました。お話を聞いていると、小林社長の属人性にとても頼っているところがあると感じます。つまり、貴社の業務が解易化されていない気がするんですが」
小林氏「言い返す言葉もありません。それは問題だと感じています」
齋田氏「立ち上げ段階では、属人的で、社長の個性でやっていくことはいいと思うのですが、発展にあたって、将来社長の個性を離れた発展というか、会社の持ち味とか、そういうものに対してはどうお考えですか」
増田氏「とても大事な質問ですね」
小林氏「一番弱いところをつかれた感じで、まさにおっしゃる通りです。今日のプレゼンも、私の思いだけでやっているようなものです。ほかの人ができるか。 実はトライアルで8月から人を入れて、研修期間1週間かけて、どこまでできるか実験する予定です。将来的には、私は総合プロデュースをして、コンテンツづ くりなどをしたいと。目指す姿は、大手アニメ制作会社のボスのように「あーせぇ、こーせぇ」言うだけみたいな(笑)」
齋田氏「さきほど、eラーニングの話もありましたが、アメリカでは思考のプロセスをチャート化して、ソフト上でやるようなものも相当出ています。なんか、 そういうフォーミュラ化していく中で、小林さんの特色や小林さんがチェックしている項目などが明確になるといいかなと。それがフローチャートかチェックリ ストなのかはわかりませんが」
小林氏「実はある大学の教授や研究員と計画していることがあります。アメリカの教材はビジュアル化が進んでいて、教科書の端に、ここにアクセスしてくださ いって書いてあって、それにアクセスするとビジュアルで解説されているんです。それを、日本でもできるようにと。それと、その大学内ではネッワークが進ん でいて、宿題や試験もネットで行なうような動きがあります。変な話、ネットカフェでも試験受けられるみたいな。授業も受けられて、ちゃんとアクセスしたと いう信号も送られて、サボっていないかもわかる。そういう案もあります」

増田氏「齋田さんの話は、小林さんだけではなく、才能のある起業家が自分の技量や才覚やセンスを持って市場に成功した時に必ずぶつかる問題なんですね。ほ かの人ができないから優位性のある事業ができるわけです。ですがそれは、ほかの人ができないからこそ、人にも任せられない。多くの中小規模の起業家がぶつ かる矛盾だと思います。この時の選択はいろいろあると思うんですよね。いいじゃない、他の人に伝えられないなら自分がひっくり返ればそれでおしまい、とい う考えもあるし、でもやっぱり顧客への責任がありますよね。また、拡大したいから、この思いを才能のある誰かに伝えるとか。小林さんも、ある種の才能があ ります。藤原さんの質問から、何かが違うんだとお客さんに言わせる力があることがわかりましたよね。そして齋田さんが言うように、いわゆる“小林の視点” がどうなっているのかが解明されて、一定の才能のある人に対してレクチャーしていく、というのもあるでしょう。小林さんは引き出しの能力が高いんでしょう ね。人から、コツを聞く能力。異業種の中にひょいと立ち入ることができる人っていますね。新聞記者などもそうです。いろんな業種のところへ行って、あっと いう間に肝となる部分を聞き出してしまう。そういう才能と出合って、連携できないか、という考えもありますね。いろんな方法があると思います。これは、皆 さんにとっても問題です。自分ができている事業を拡大しようと思って、ほかの人に任せたら、結局はお客さんから不信を買うというようなことに陥る可能性が あるわけです。これはぜひ、自分の問題として持ち帰ってほしいと思います。製品の問題、事業の強み、リスク、いろいろ出ましたね。では次に小林さんがこれ からもっとどんなことができると思いますか?」

吉田氏「事業展開にあたってという項目に、飲食店舗などのサービスマニュアルのことも書いてありましたが、その場合は、大手ハンバーガー店のような全国一 律で同じサービスをする、そういう規模の企業が利益追求するところならいいのでしょう。が、個店での接客ではどうかと。私は、専門店やセレクトショップ、 ブランドショップの人材コンサルをやろうとしているのですが、お客さまとの接客はあくまで人間性が問われる部分だと思うんです。名人芸と言われる方もい らっしゃいます。それをマニュアル化するのは少し時期尚早かと思います」
増田氏「時期尚早というより、それは、できないのでは、ということですか?」
吉田氏「逆に、飲食店舗の場合は販売以外の雑務、レジ打ち、包装、納品、下だし、仕分け、バックヤード業務、人事や総務など、そういう部分ではどうだろう と思うんです。経営者というのは徹底的にコスト削減したいという気持ちがあって、販売の第一線にはいい人材を送り込みたい。だから、雑務や庶務などの定形 的な業務には使えるんじゃないかと思います」
増田氏「今のご意見、サービス業界の展開についてですね。会社の規模によって、大規模なら、小規模なら、あるいは部門別で、定形業務には使えるが、直接お客さんと接する部分ではどうかと。皆さん、どうでしょう?」

山田氏「知 り合いに飲食店のオーナーがいて、従業員の教育にコンテンツをつくってくれないかと話がきています。それで私が考えているのは、今はみんな携帯電話を持っ ているじゃないですか。映像中心で携帯電話に配信して、自宅から職場に行く間に見てもらえるようにしておけば、出勤してから指示をしなくても済む。そうい うのはどうかと。ちゃんと見たかどうかもサーバでチェックできるようにしておく。見ていないなら、見ておけと言えるような仕組みはどうかと考えているとこ ろです」
小林氏「私も店舗展開しているスイーツメーカーの社長さんから、携帯電話で教育や指示ができないかと言われているところです。スイーツひとつでも、イチゴ を乗せるのはここだという厳密さがあるんですよね。それと1カ月ごとに商品パターンが変わったりもする。それを店舗ごとに教育するのは難しいと。オンライ ンで確立できないかと今開発中です。予算があれば、携帯で配信できるようにしようと」
山田氏「店舗が小さくてもニーズはあるので,ちょっとしたテンプレート化してみるとか」
小林氏「ありがとうございます。この後の交流会でぜひお話ししたいですね」

桑原氏「吉田さんが言われた、まさにそのバックヤード業務。その標準化をこのシステムでうまく追求できないかと思っています。新商品が出て、パッと切り替わった時も、新サービスを一斉に実行できるASPサービスみたいにしておけば、パッと切り換えられる」
増田氏「このスイーツは、こことここにイチゴを均等に並べなさいとか」
小林氏「今日から特売ですよとか」
増田氏「そうそう、日々変わっていきますからね」
桑原氏「小林さんは、現場の作業者の目線でつくっていくので、たぶん理解は早いと思います。アルバイトの人が入れ替わっても、やりかたがわかるので」
増田氏「お客さんと接する販売の部分では、難しいのではということについては?」

吉田氏「販売というのは、その販売員のパーソナリティに惚れて、同じ商品ならこの人から買いたいっていうのが強いんですよね」
増田氏「これは極論ですが、何パターンか販売の映像があって、それを見て自分がパチッと合う、好きな先生から選べ、みたいなシステムとか」
浦上氏「スーパーのレジでも、かわいい女子高生のところで買いたいと思うんです。でも彼女たちはスキルが低い。そういう初心者レベルならこのビジネスは マッチすると思うんです。それから最近、居酒屋の店員が日本人ではなくなってきていますよね。なぜこんな高価な電子注文盤を導入しているのかって思ったの ですが、スタッフに外国人が多いから、ですよね。これから伸びるのは、居酒屋とか介護とか冠婚葬祭とか。冠婚葬祭は地域によっても違うし。だから地域別の マニュアルで、ドミナント展開しているところが伸びているので、地域別で特化して成功しているビジネスモデルと提携していくという方法もあるのでは」
紙谷氏「難 解な技術とか匠の技とは違いますが、障害者にはどうでしょう。特定子会社制度で雇用が増えないのも、やはりマニュアルが難しいという事情があると思うんで す。ちょっとした工夫を施したマニュアル、小林さんならできるのではないかと。小林さん以外のスタッフに広げて展開していくというのも、障害者雇用に悩ん でいる企業、税金問題も絡むので、需要があるのでないかと」
増田氏「今の世の中の変化を見るとありますね。外国人労働者の拡大、障害者の雇用促進、それにまつわる課題も多くあります。両者ともに非常に映像を通じたコミュニケーションが大事だと思います」

宮本氏「とてもベタなんですけど、家電製品の取扱説明書とか。今でもすでにあるでしょうし,小林さんがやることではないかもしれませんが。先日、ウォシュレットを買 いまして、Web見ながら設置したらわかりやすかったんですよ。ほかにも家具の設置、LANケーブルの設置など、基礎的な案件で拡販モデルとしてあっても いいかなと」
増田氏「確かに、すごい難しいものを理解させる小林さんの能力は使わなくてもいいかも知れませんが、組み立て家具の取扱説明書もそうですね。世界中の言語 で書いてあって難しいんですよ。あれが画像で教えてくれたら本当に楽だと思いますね。コスト削減でカスタマーも作業する時代になりましたね。映像による伝 達の市場、今後はさらに伸びそうですね。そんな気がしてきました」

清水氏
「知り合いが、葬儀業界 のコンサルと組んで仕事をしているんです。葬儀が終わった後、皆さん、お坊さんに対しても葬儀社に対しても「お金を取られた」というように思う人が多いん ですね。そうじゃない葬儀社とはどういうところかを教えるコンサルタントがいまして。風通しが悪いといわれる葬儀業界に営業をかけようかということになっ ていて。例えばそれをビデオ化する、見える化すれば、セミナーでもよりわかりやすくなりますよね。不当な請求か正統な金額かがわかるし、地域によっても異 なるので地域別につくってくれるといいですよね」
小林氏「後期高齢者医療制度や税金の仕組みとか、解易化で映像にしたら全員が理解できると思うんですよね」
清水氏「ですよね。それを製品として売って、仕組みを説明してくれる先生と一緒にセミナーなどをやればいいのなと。売るだけじゃだめなので」
増田氏「そうですよね。何も作業員だけじゃないし、外国人だけでもなく、障害者だけでもない。僕らだって旅行の規約とか、保険加の定款とか、わからないで すもんね。わからないと諦めているのが前提にあるし、企業側も、どうせ読まないだろうと一応渡すみたいなところがありますね。こういうグレーなところに切 り込んでいく。本当は理解しないと互いに問題ですからね。いっぱいチャンスがありそうです。さぁ、もう定刻をオーバーしました。ですがこの後の交流会で、 こんなものもいいんじゃないか、というようなことぜひ、小林さんと桑原さんのふたりをつかまえて話してください。今日もいろんな素晴らしい視点、びっくり する角度からの提案が出ました。この調子で来月もいきましょう。ありがとうございました」
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■PRタイム

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菊池徳行氏
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目次哲也氏
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紙谷清子氏

●菊池徳行氏/ 愛媛県宇和島市の出身で、故郷を離れて活躍している仲間と、自分が好きなTシャツを制作販売して、故郷納税しようという活動についてPR。こだわりのT シャツの説明と、宇和島の出身者はもちろん、行ったことがある、というつながりの協力を呼びかけた。また、定例会参加者それぞれも自身の出身地を応援して はと呼びかけ、Tシャツ制作業者のことなら気軽に相談を、と語った。


●目次哲也氏/ 大阪からの参加。9月25日(金)・26日(土)に、東京都立貿易産業センター浜松町館で開催する『独立開業フェスタ』についてPR。今回で2回目となる このフェスタは初回よりさらにパワーアップし、独立支援サポート、日本政策金融公庫やFC無料相談コーナーなども。また25日にはNICeメンバーの寺田勝紀氏を、26日には増田紀彦氏を講師にセミナーも開催。詳しくは、製作中のWebサイトを。http://www.fc-fair.com/2009/07/post-6.html


●紙谷清子氏/ 地元・東京杉並区での活動内容について、今日のために手書き制作したチラシをまず配付。高円寺プラットホームワークショップなど、地域活性化と雇用創成の ための地域活動を紹介した。起業したい、または杉並にも拠点を広げたい起業家を大歓迎すると活動への参加を呼びかけた。また、区内の全区立小学校に1万 8000部を無料配布している季刊教育情報誌『なみすく』も紹介し、秋発行号の広告出稿もPR。

 

■交流会

宮崎県から参加した谷口行利氏の乾杯の音頭で交流会がスタート!! 

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本日の料理は、三陸産めかぶとクラゲの酢の物、島根県松江産の水なすとコリンキーのカルパッチョ、自家製切り干し大根、ズッキーニとトマピーのオーブン焼き、琵琶湖産の天然稚アユのフリット、国産若鶏のクリーム煮、エスニック炒飯。料理人鈴木信作さんの自信作7品。 

皆さん、まだまだ話し足りない感はあるものの、定刻22時を迎えお開きの時間に。新潟県から参加した白川正志氏の1本締めで、第3回東京定例会は幕を閉じた。


撮影・取材・文/NICe編集委員 岡部 恵